天鐘(2月11日)

「両掌(てのひら)を内側に向けて指を真っ直ぐ伸ばし、両腕を垂直に高々と挙げる」。20年程前、明治期の法令「太政官布告」を模した“万歳三唱令”なるものが広まり、全国を騒がせた▼原文は旧字体の漢字カタカナ交じりで、いかにも明治を彷彿(ほうふつ).....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 「両掌(てのひら)を内側に向けて指を真っ直ぐ伸ばし、両腕を垂直に高々と挙げる」。20年程前、明治期の法令「太政官布告」を模した“万歳三唱令”なるものが広まり、全国を騒がせた▼原文は旧字体の漢字カタカナ交じりで、いかにも明治を彷彿(ほうふつ)させる体裁。人騒がせな悪戯(いたずら)だったが断髪令、廃刀令に次ぐ“明治の3大布告”と呼ばれ、一人歩きした▼10年前、青森県選出の故木村太郎衆院議員が、当時の鳩山由紀夫首相に「手のひらを天皇陛下に向け、降参を意味するような万歳は作法と違う。ご存じないのか」と詰問。政府は「正式な作法はない」と否定した▼確かに作法は真っ赤な偽物。一昨年になり、公務員数人が匿名で「ゴルフコンペの打ち上げの余興で酔った勢いで考えた」と告白、謝罪した。あやふやな時に“布告”を持ち出されたら誰もが信用してしまう▼元々は中国語で長寿を祝う「千秋万歳(せんしゅうばんぜい)」が語源。明治22年の今日(建国記念の日)、明治憲法の公布を祝って観兵式に向かう天皇の馬車に向かい、東京帝大の生徒らが「万歳(ばんざい)」と歓呼の声を挙げたのが始まりとか▼首相の写真を見ると、東条英機はV字型、中曽根康弘や海部俊樹、旧陸軍兵士も手のひら前側。安倍晋三氏は昨年の即位の礼で“作法”とされる手のひら内型を頑(かたく)なに守った。降参は別にして、祝賀の万歳は唱和とともに元気よく一斉に両手を挙げれば趣旨に沿うらしい。