天鐘(2月8日)

40年くらい前、東京・後楽園に野球を見に行った。憧れの巨人戦だ。球場に着くと試合は既に始まっていた。早くチケットを買いたいのに、勝手が分からない。父も初めてのプロ野球で右往左往している▼「急いで入ったほうがいいよ」。おじさんが優しく声をかけ.....
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 40年くらい前、東京・後楽園に野球を見に行った。憧れの巨人戦だ。球場に着くと試合は既に始まっていた。早くチケットを買いたいのに、勝手が分からない。父も初めてのプロ野球で右往左往している▼「急いで入ったほうがいいよ」。おじさんが優しく声をかけてきた。外野席を2枚で1万円。夢のような時間だった。迫力あるプレーに大満足。自慢話を聞いてくれた友人の指摘で、正規料金の数倍もの出費だったことを知った▼スポーツやコンサートのチケットを高額で売りつける「ダフ屋」。かつて“シノギ”の舞台は路上だったが、今はインターネット。不正転売が横行し、新たな法規制を余儀なくされたのは記憶に新しい▼ネットでマスクの高騰が続いている。定価の10倍はざら。需給バランスが反映されるとはいえ、新型肺炎の感染拡大を受け、一部が価格をつり上げているのは明らか。火事場泥棒が札束を手にほくそ笑む▼一週間前、マスクを手に入れるのに半日近くかかった。消毒液の類いも売り切れ。店頭の品薄状態は今も続く。ぽっかりと空いた棚の前でお年寄りが嘆いていた。医療現場に困惑が広がっている。北国にも花粉が飛ぶ季節がやって来る▼不安に乗じた転売ビジネス。ようやく業者も対応に乗り出した。ネットではデマと誹謗中傷も飛び交う。猛威を振るうウイルスよりも匿名の世界にはびこる人間の狂乱が怖い。