原発の高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定で、第1段階の文献調査が北海道寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村で始まってから17日で半年。東京での資料調査が中心で、住民の関心は低い。国は文献調査を処分事業への議論を深める場とするが、進んでいないのが実情だ。寿都町では秋に町長選を控え、反対派が候補擁立に向け動きだすなど、対立も深まっている。[br][br] ▽人が来ない事務所[br] 4月中旬、処分事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)が2町村に開設した広報事務所。住民の姿はなく、担当者は「誰も来ない日もある」とこぼした。寿都町の70代女性は「行くつもりもない」。[br][br] 調査は全3段階で、文献調査の次はボーリングなどで調べる概要調査、地下に調査施設を設置する精密調査と続く。文献調査の交付金は最大20億円。財政に悩む2町村では地域振興への期待もあったが、人件費やごみ収集車の新調など必要経費や基金に回され「恩恵」は見えにくい。調査を歓迎する寿都町の斉藤捷司さん(79)も「町が潤った実感はない」と話す。[br][br] ▽対照的な2町村[br] NUMOと2町村は4月、産業団体の関係者や住民ら約20人と意見交換する「対話の場」を初開催した。神恵内村ではスムーズだったが、寿都町は反対派が「説得の場だ」と批判して紛糾し、対照的な結果となった。[br][br] 神恵内村の50代女性は「元々近くに北海道電力泊原発があり(処分事業に)強い関心は持てない」と諦める。村で旅館を営む池本美紀さん(43)は「住民は人ごとではなく『自分ごと』として意識してほしい」と願う。[br][br] 一方、寿都町では反対派住民が町を相手に調査受け入れを巡る町議会文書の開示を求め提訴したほか、賛成派町議のリコール(解職請求)に向けての準備を進めるなど、反発の動きは強まる。[br][br] ▽秋の町長選[br] 寿都町は片岡春雄町長が「(調査に応募しても)核のごみを持ってくる訳ではない」「文献調査をして寿都町が安全かどうか調べるべきだ」などとして、調査受け入れを主導。当時反対派が求めた住民投票はせず、町長の6選を目指しての出馬が見込まれる今秋の町長選で民意を問われる。無投票で再選を続けてきたが、反対派は対抗馬擁立を水面下で調整している。[br][br] 町長は3月、精密調査に進む際に住民投票をしようと条例案を提出。だが小西正尚議長が概要調査に進む前に住民投票を行う修正案を出して可決されると、一転して受け入れた。[br][br] 町長と議長は文献調査受け入れで歩調を合わせており、ある町議は「反対派を取り込み、町民を安心させようと話を付けたのでは」と推測する。[br][br] この町議は20年近く片岡町長と活動してきた。ただ「今は全く支持できない。町民もみんな町長のことが好きだったのに、核のごみで町が分断された」と落胆した。