【赤字計上の楽天】「経済圏」拡大へ岐路 巨額投資で体力消耗、にじむ焦り

 楽天グループの事業別営業損益
 楽天グループの事業別営業損益
独自のポイント制度で一大経済圏を築き上げた楽天グループの経営が岐路を迎えている。新型コロナウイルスの流行を受けてインターネット通販事業は好調だが、携帯電話事業への巨額投資で体力を消耗。米中対立のさなかに中国IT企業の出資を受け入れるなど、資.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 独自のポイント制度で一大経済圏を築き上げた楽天グループの経営が岐路を迎えている。新型コロナウイルスの流行を受けてインターネット通販事業は好調だが、携帯電話事業への巨額投資で体力を消耗。米中対立のさなかに中国IT企業の出資を受け入れるなど、資本政策に焦りもにじむ。[br][br] ▽囲い込み[br] 「思い切った料金戦略でも十分な利益は出る。経済圏への貢献も大きい」。三木谷浩史会長兼社長は13日の決算説明会で、赤字を出しながらも携帯事業を続ける意義を強調した。[br][br] 昨年4月から携帯事業に本格参入したのは、携帯の契約を「入り口」に自社グループで手掛ける幅広いサービスへと消費者を誘導し、経済圏を拡大する思惑がある。[br][br] 1年間無料など採算度外視のキャンペーンを打ち出し、契約申込数は400万を突破した。65%は楽天カード、39%は楽天銀行の利用実績があり「囲い込み戦略」は一定の成果を上げている。[br][br] ただ、携帯事業への投資は1兆円規模となる見通しで、当初の想定から2千億円増えた。基地局を前倒しで整備している事情もあり、2021年1~3月期は携帯事業で972億円の営業赤字を計上。赤字額は前年同期の2・7倍に膨らみ、ネット通販や金融事業の利益を食いつぶしている。[br][br] ▽波 紋[br] 傷んだ財務体質を改善しようと踏み切った資本増強策は波紋を呼んだ。 「そんなに追い込まれているのか」。菅政権幹部は、楽天が3月に実施した第三者割当増資の引受先に中国のIT大手、騰訊控股(テンセント)の子会社が入ったと知り、驚きを口にした。[br][br] テンセントは米国が中国軍とのつながりを疑い、警戒する企業だ。楽天側は「純投資」と説明するが、政府内には楽天の顧客情報が中国当局に渡ることへの懸念が浮上。政府は米国と共同で、楽天の情報管理体制を監視する措置を取る。[br][br] 同じく引受先となった日本郵政に楽天が出資を持ち掛けたのは今年1月だった。昨年末に業務提携を発表した直後で、郵政内に驚きが広がった。テンセント側の出資について事前に十分な説明はなく「郵政が保有する膨大な顧客情報がテンセント側に渡る懸念がないか確認に追われた」(郵政幹部)という。[br][br] ▽総力戦[br] 昨年9月に発足した菅政権が携帯業界への値下げ圧力を強めたことで、競争環境は激しさを増している。NTTドコモなど先行3社は割安な料金プランを発表。低価格を売りとする楽天も対抗値下げを迫られ、黒字化のハードルは高くなった。[br][br] 主力のネット通販事業でも、配送に強みを持つ米アマゾン・コムに対抗するため、物流拠点の省人化に向けた投資が続く。[br][br] 取引銀行幹部は「赤字の携帯事業を支えながら、物流にも攻めの投資をしないと競合の後手に回る」として、グループとして総力戦が続くとの見方を示した。 楽天グループの事業別営業損益