亡き友と約束の水族館 震災10年、ようやく実現へ/福井市

 「国見クラゲ水族館」の開館を目指す田中俊之さん=1日、福井市
 「国見クラゲ水族館」の開館を目指す田中俊之さん=1日、福井市
日本海に面する福井市の国見地区で、公民館として使われていた建物が今年、クラゲなどを展示する小さな水族館になる。館長は同市でバーを営む田中俊之さん(42)。開館に向け努力できたのは、10年前の東日本大震災の津波で亡くなった友人と「自分の水族館.....
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 日本海に面する福井市の国見地区で、公民館として使われていた建物が今年、クラゲなどを展示する小さな水族館になる。館長は同市でバーを営む田中俊之さん(42)。開館に向け努力できたのは、10年前の東日本大震災の津波で亡くなった友人と「自分の水族館をつくる」と約束したからだ。[br][br] 幼少期から生き物好き。高校卒業後に就職した郵便局も6年で辞め、東京にある生物系の専門学校に入り直した。在学中の2004年、鹿児島県の屋久島で、ウミガメの生態調査に参加。そこで仙台市から来た2歳年下の女性と友人になった。どちらも生き物に関わる仕事を志していた。[br][br] 2人は翌年も調査に参加し「生き物と仲良くなれる未来をつくろう」と意気投合。田中さんは、水族館をつくると約束し、実際に数カ所の水族館で飼育員の経験を積んだ。[br][br] 「娘が津波で亡くなった」。友人の両親から連絡があったのは震災の数日後。職場の水産加工会社が津波に襲われたという。ショックで状況がのみ込めなかった。[br][br] 気持ちが落ち着くのに数年かかったが、次第に意志が強かった友人を思い返し「自分も頑張らなければ」と水族館づくりに向け奮起。19年、手始めにクラゲを展示するバーを開いた。[br][br] 水族館の場所探しも始め、移転の決まっていた公民館の借用を市に申請、今年に入り認められた。震災から10年となる3月、仙台の友人の実家を訪れ「約束を果たせそうだ」と仏壇に報告した。[br][br] 今年中の「国見クラゲ水族館」完成を目指す。コンセプトは「地域密着」。クラゲや地元漁師が取った魚など計約200種を展示予定だ。 「国見クラゲ水族館」の開館を目指す田中俊之さん=1日、福井市