国内では新型コロナウイルスワクチンの大人への一般接種がこれからという段階だが、海外では子どもに接種する動きが進んでいる。子どもは感染しても無症状や軽症で済むことが多い一方、重症化する場合もある。現在の流行「第4波」では変異株の広がりで子どもの感染例が増えており、日本でも接種年齢拡大に向け協議が始まった。[br][br] ▽集団免疫[br] 米食品医薬品局(FDA)は10日、米製薬会社ファイザーのワクチンの接種について12~15歳にも緊急使用を許可すると発表した。カナダでは先に承認されているが、日本など他の国では同社のワクチンの接種対象者は16歳以上に限定されている。15歳以下は当初の臨床試験(治験)の対象ではなく、データがそろっていなかったためだ。同社は、FDAから許可された12~15歳のほか、生後6カ月~11歳についても投与量などを検証する治験に着手している。[br][br] ワクチンを共同開発した独バイオ企業ビオンテックのシャヒン最高経営責任者(CEO)は「9月には学童や未就学児のデータの提出を目標にしている」と述べている。 同様に海外で普及している米モデルナ製ワクチンは18歳以上が対象のため、12~17歳、生後6カ月~11歳の二つの年齢層で治験を進めている。[br][br] 米国では人口の8割近い接種で流行を食い止める集団免疫が確立されるとの見方があり、接種年齢層の拡大で流行前の生活に戻ることが期待されている。[br][br] ▽変異株[br] もともとワクチンは子ども向けが多い。日本では結核を予防するBCGなど、感染症のほとんどの定期接種は5歳までに行っている。インフルエンザワクチンは任意だが生後6カ月から受けられる。[br][br] 新型コロナウイルス感染症の場合は重症化の懸念から、国内では高齢者が優先されてきた。ただ変異株の影響で若い世代への対策も強める必要性が出てきた。日本で最も多く見つかっている英国株ではどの年齢層でも、従来株より感染力が強まっている可能性が指摘されている。保育施設で子どもの集団感染例もあった。[br][br] ▽重症化[br] ワクチンについては健康への長期的な影響など、はっきりしていないこともあるが、日本では接種の普及が早い海外の状況を参考にして見極めることができそうだ。[br][br] 米国で小児感染症の診療に携わる紙谷聡医師は「感染が爆発的に広がると重症化する子は出てくる。早期に世界の子どもにワクチンが広がることを願っている」と話している。