悲願達成へ「審査は順調」 迫る縄文遺跡群の世界遺産登録

「北海道・北東北の縄文遺跡群」世界文化遺産登録までの道のり
「北海道・北東北の縄文遺跡群」世界文化遺産登録までの道のり
「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界文化遺産登録が目前に迫っている。7月16~31日にオンラインで開かれる国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会で、登録の可否が審議される見込み。審議の前提となる、ユネスコ諮問機関の国際記念物遺跡会.....
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 「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界文化遺産登録が目前に迫っている。7月16~31日にオンラインで開かれる国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会で、登録の可否が審議される見込み。審議の前提となる、ユネスコ諮問機関の国際記念物遺跡会議(イコモス)による評価結果「勧告」は、6月4日までに行われる。これまでの中間報告でも改善を求める指摘はなく、悲願達成へ「審査は順調」と関係者の期待も高まる。青森県内の遺跡では登録後を見据え、観光客らを受け入れる整備も進んでいる。[br][br] ▼中間報告は指摘なし[br] 縄文遺跡群は2009年、登録の前提となる文化庁の「暫定一覧表」にリスト入り。19年12月に推薦が決まり、20年9月にはイコモスが現地調査を行った。約10年以上におよぶ長い挑戦が、ようやく実を結ぼうとしている。[br][br] 今年の世界遺産委では、新型コロナウイルスの影響で延期した20年の委員会分も合わせて審査される。イコモスの勧告は▽世界遺産登録がふさわしいとする「記載」▽追加情報の提出を求め、再審議する「情報照会」▽より綿密な調査などが必要な「記載延期」▽登録にふさわしくないとする「不記載」―の4区分。委員会の6週間前までに文化庁に伝えられる。仮に「記載」との評価でも、構成資産や名称の見直しを求められる場合もある。[br][br] 県世界文化遺産登録専門監の岡田康博氏によると、今年1月に行われたイコモスの中間報告では、構成資産の見直しにつながるような指摘はなかった。「できることは全てやってきて、順調に進んでいると思う。受験の結果を待っているような気持ち」と心境を表現する。[br][br] ▼価値を伝える新施設[br] 縄文遺跡群は青森、岩手、秋田、北海道の4道県にある17遺跡で構成。採集や漁労、狩猟による定住生活の様子、当時の精神文化が色濃く残り、農耕以前の暮らしの在り方を示していることが世界的に価値があるとされる。[br][br] 登録後を見据え、遺跡の整備も進んでいる。七戸町の二ツ森貝塚では今年4月、遺跡から約800メートルの旧天間東小校舎を活用し、展示施設「二ツ森貝塚館」がオープンした。[br][br] 二ツ森貝塚は小川原湖が海とつながる湾だった時期の集落遺跡で、貝塚の規模は県内最大級。当時の人が食べていたとされる貝類や魚類、動物の骨が数多く見つかり、当時の環境や食生活の変化が残されている。[br][br] これまでは遺跡から約7キロも離れた町立中央公民館に展示施設を設けていた。七戸町教委世界遺産対策室主査・学芸員の小林由夏さんは「公民館では満足に展示できず、遺跡の価値を伝えるのに不十分だった」と指摘する。[br][br] 新しい展示施設には、遺跡からはぎ取った貝殻の層の断面、出土した土器や石器、動物や魚の骨を展示。当時の生活を身近に感じてもらおうと、土器の破片などに触ることができるコーナーも設けた。「一般の町民の来館がまだ少ない。世界遺産登録をきっかけに興味を持ってもらえたら」と願いを込める。[br][br] 岡田氏は「世界遺産登録は“頂点”ではない」と強調する。「遺跡をずっと守り続けるために、人を育て、仕組みをつくっていかなければならない」。持続的な保護と活用に向け、世界遺産登録が地元のモチベーション向上につながれば―と期待を寄せている。「北海道・北東北の縄文遺跡群」世界文化遺産登録までの道のり