時評(4月16日)

韓国で次期大統領選挙の前哨戦といわれたソウル、釜山(プサン)両市長選挙は、与党「共に民主党」の候補が大差で敗れた。昨年4月の総選挙では、与党が圧勝したが、韓国民の選択はわずか1年でまったく正反対になった。 韓国社会は一昨年、曺国(チョグク).....
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 韓国で次期大統領選挙の前哨戦といわれたソウル、釜山(プサン)両市長選挙は、与党「共に民主党」の候補が大差で敗れた。昨年4月の総選挙では、与党が圧勝したが、韓国民の選択はわずか1年でまったく正反対になった。[br][br] 韓国社会は一昨年、曺国(チョグク)元法相をめぐり保守派と進歩派が激しく対立した。曺国法相の娘をめぐる大学入試疑惑や、投資ファンド疑惑が明らかになり、韓国民に大きな失望を与えた。だが、政府の新型コロナウイルスへの感染防止対策が評価され、昨年4月の総選挙は与党が圧勝した。[br][br] しかしその後、検察改革を巡って秋美愛(チュミエ)法相と尹錫悦(ユンソクヨル)検事総長が対立。国民は検察改革の必要性を感じていたが、秋法相の指揮権発動などあまりに強引な手法に付いて行けなくなった。[br][br] 文在寅(ムンジェイン)政権が重要政策として掲げた雇用問題も改善せずコロナ禍もあって失業問題はより深刻化した。特に若年層の失業難は若者に深刻な打撃を与えた。[br][br] さらに不動産価格の暴騰は人々の怒りを買った。若者はソウル市内に自分の家を持つ希望を抱けなくなった。そこに政府傘下の韓国土地住宅公社の職員による投機疑惑が発覚した。[br][br] 文政権は「ろうそくデモ」で生まれた政権だ。政治的な民主化だけでなく、社会的、経済的にも民主化された「公正な社会」を求めて生まれた政権だったが、その期待は裏切られた。[br][br] 保守野党の「国民の力」は大勝したが、野党を支持したというより、文政権への不支持の結果と理解すべきだろう。この選挙で大勝したからと言って、来年3月の大統領選挙で野党が勝利する保証はない。尹錫悦前検事総長に人気が集まっているが政治家として成功するかどうかは未知数だ。[br][br] 文政権は内政だけでなく外交も手詰まりだ。最も力を入れている南北関係の改善は、米朝関係の進展がないかぎり困難だ。米朝関係の改善は、文政権の残り任期1年では無理だ。[br][br] 韓国は東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出に強く反発し、日韓関係はさらに悪化しそうだ。だが、文政権としても、最悪となっている日韓関係をこのまま次期政権に渡すのは「負の遺産」となる。[br][br] 文政権が残り任期で最も成果を出せるのは日韓関係だ。バイデン米政権も日韓関係の改善を求めている。北朝鮮対応で日米韓の協調態勢をつくるためには日韓関係の改善が必要だ。文大統領が徴用工や慰安婦問題で具体的な解決策を提示することを期待したい。