【原発処理水海洋放出】風評払拭取り組む魚仲卸業者「これからという時に」

 福島県相馬市の松川浦漁港に水揚げされた魚介類を買い付ける飯塚哲生さん=7日
 福島県相馬市の松川浦漁港に水揚げされた魚介類を買い付ける飯塚哲生さん=7日
福島県の水産関係者らが反対する中、東京電力福島第1原発で出た処理水が海に放たれることになった。漁業復興への光明が見え始めたタイミングでの無情とも言える決定。風評被害の払拭(ふっしょく)へ取り組んできた、同県相馬市の魚仲卸会社経営飯塚哲生さん.....
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 福島県の水産関係者らが反対する中、東京電力福島第1原発で出た処理水が海に放たれることになった。漁業復興への光明が見え始めたタイミングでの無情とも言える決定。風評被害の払拭(ふっしょく)へ取り組んできた、同県相馬市の魚仲卸会社経営飯塚哲生さん(37)は「これからという時なのに、積み上げた努力が台無しにならないか」と顔を曇らせた。[br][br] 原発事故で全面的な操業自粛に追い込まれた福島県の漁業は2012年6月、魚種や海域を絞った試験操業を開始。一時は44魚種に出荷制限が掛かっていたが、既に全て解除された。福島県漁業協同組合連合会は3月末に試験操業を終了。漁の自主制限を段階的に緩和し、数年かけて事故前の姿に戻す態勢へ移行したばかりだった。[br][br] 祖父が創業した会社を09年に継いだ飯塚さん。東日本大震災の津波で自宅が流されるなど大きな被害に遭ったが、「福島の漁業を復興させたい」との思いで半年後に仕事を再開した。試験操業で取れた魚も取り扱ってきたが、付き合いの長い取引先でさえ「扱えない」と断られるなど風評被害の深刻さを肌身で感じてきた。[br][br] 検査して「放射性物質による汚染はない」と国や県がいくら太鼓判を押しても、福島県産というだけで隣県産より安値しか付かない現実。こうした状況を変えたいと、地元漁師と協力してドンコのつみれなどの加工商品を開発したり、漁師と首都圏の消費者との交流会を開いたりしてきた。[br][br] 事故から10年がたち、購入をためらう消費者は減ってきた印象だが、他県との価格差は存在する。「放出決定が消費者や小売業者にどの程度影響するかは誰も分からないが、マイナスであるのは確実だろう」と話す。[br][br] 政府は風評対策を講じるというが「どんなに安全だと伝えても、危険だと思っている人の気持ちを変えることは難しい」と諦めに似た感情がある。一方で「福島の魚を評価して食べてくれる人を大事にして、もっとファンを増やしたい」という気持ちも年々強くなってきた。風評被害を克服する努力はこれからも地道に続けるつもりだ。 福島県相馬市の松川浦漁港に水揚げされた魚介類を買い付ける飯塚哲生さん=7日