100日後に迫った東京五輪は観客数の上限や水際対策を巡り、なお課題が山積する。日本側と国際オリンピック委員会(IOC)は「人類がウイルスに打ち勝った証し」(菅義偉首相)として開催を前提とした方針を共有するが、各論では隔たりがある。新型コロナウイルス感染症の「第4波」が懸念される中、再延期や中止を求める国内世論とのギャップも解消される兆しはない。[br][br] ▽科学的知見[br] 「競泳の池江璃花子選手らの活躍は日本を沸かせ、東京大会が近づいているとの実感につながる。安全安心を最優先に準備を着実に進める」。加藤勝信官房長官は13日の記者会見で、感染症対策を徹底し大会開催を目指す意向を強調した。[br][br] 政府や大会組織委員会にとって最大の懸案は、4月中に方向性を出す観客数の上限だ。日本側は国内イベントの上限に準じることを基本としており、会場収容人数の50%の案が有力視されている。しかし、新型コロナのまん延防止等重点措置の東京への適用で、都内のイベントは上限5千人となり「観客数の議論が進めにくい環境」(組織委幹部)になっている。[br][br] IOC側は検討に当たり「科学的な知見」を重視するよう主張。ワクチン普及などにより感染状況が改善する可能性もあるとみて、4月中の最終決定には否定的な見解を日本側に伝えていた。観客の扱いは大会全体の印象や運営に直結するだけに困難な調整が続く。[br][br] ▽隔離に難色も[br] 水際対策では選手団以外の大会関係者に対する隔離措置や行動管理が「争点」になっている。[br][br] 政府は感染再拡大や変異株の広がりに対する厳しい国内世論を踏まえ、今年の緊急事態宣言解除後、来日する大会関係者には入国後3日間の完全隔離を求めてきた。[br][br] 一方、IOCなどは大会運営の観点からこうした措置に難色を示した。4~5月に日本で開催予定だった飛び込みなどの五輪最終予選3大会は、国際水泳連盟(FINA)が関係者への厳しい隔離措置などを理由に中止を通告。日本側が譲歩を余儀なくされる騒動となった。[br][br] 入国した関係者の行動管理や公共交通機関の利用でも、関係機関の立場は割れる。大会関係者は「残された時間は少ない。溝は埋まるだろうか」と不安視する。[br][br] ▽なし崩し[br] 共同通信社が10~12日に実施した全国電話世論調査では五輪パラを今夏開催すべきだと答えた人の割合は24・5%にとどまった。再延期は32・8%、中止は39・2%で合わせて70%を超え、世論の好転は見通せない。[br][br] 組織委は大会参加者に適用する感染防止対策をまとめた「プレーブック(規則集)」の第2版を4月中に公表し、安全な大会を実現する具体策を示す予定。肝心の開催可否判断の基準や期限への言及は誰からもないまま、なし崩し的に準備作業は大詰めに入る。