【まん延防止措置】危機教訓、都は先手打てるか 重い腰上げた政府

 東京都が公表した新規感染者数の試算
 東京都が公表した新規感染者数の試算
政府は8日、東京都と京都府、沖縄県に「まん延防止等重点措置」を適用する方針を固めた。小池百合子都知事の要請を受け、重い腰を上げた形。都は大阪府の危機的状況を教訓として先手を打つ構えだ。だが新型コロナウイルスの感染は全国的な広がりを見せ、地域.....
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 政府は8日、東京都と京都府、沖縄県に「まん延防止等重点措置」を適用する方針を固めた。小池百合子都知事の要請を受け、重い腰を上げた形。都は大阪府の危機的状況を教訓として先手を打つ構えだ。だが新型コロナウイルスの感染は全国的な広がりを見せ、地域を絞って対策を講じる重点措置の限界は既に露呈。全国に影響が及ぶ首都の感染抑止に向けた道筋は見通せない。[br][br] ▽警告[br] 「緊急事態宣言解除後の人の増え方は大阪よりも急ピッチだ。今後の感染者数に跳ね返ってくる」。8日に開かれた都のモニタリング会議では、出席した専門家から厳しい警告が続出した。[br][br] 都庁内で緊張が高まったのは、大阪府の新規感染者が878人と最多を更新した7日。3週間早く宣言を解除した大阪と同じことが起きかねず、「早めに手を打たないと大変なことになる」(幹部)と、一気に重点措置の要請に傾いた。[br][br] 7日には、厚生労働省の専門家組織のメンバーからも深刻な状況を憂える発言が相次いでいた。大阪府では宣言が解除された3月1日以降、夜の繁華街の人出が増加。今月5日に重点措置が始まった。[br][br] メンバーの一人は「大阪への適用は遅く、既に宣言レベルだった」と政府や府の対応を疑問視した。日本医師会の釜萢敏(かまやち・さとし)常任理事は「解除直後ぐらいが適用すべき時期だったと思う」とし、3月中旬ごろが効果を期待できた最後のチャンスだったとの見方を示した。[br][br] ▽限界[br] 後手に回った一因は、菅政権が重点措置の適用に後ろ向きだったことだ。「宣言解除が早かったため感染が拡大した」との批判を危惧したことが背景にあった。[br][br] 都道府県の意向が固まるのを待って適用するという政権の基本姿勢も影響した。政府高官は「まず自らできることをやってもらい、その効果を見極める。どうしても必要となったときに判断する」と説明した。[br][br] 一方、大阪府の吉村洋文知事は8日、記者団に「早いか遅いかは結果論では言えるが、未来は予測できない。専門家から適用すべきだとの助言もなかった」と遅かったとの批判に反論した。[br][br] 都の対応に効果がなければ、大阪並みに感染が広がる可能性は高い。そうなれば地方への影響は計り知れないが、打つ手は乏しい。[br][br] 都は23区などで飲食店への営業時間短縮要請を再び午後8時閉店にすることを検討するが、クラスター(感染者集団)は飲食店の他にも広がって多様化。感染力の強い変異株の流行という難題も立ちはだかる。[br][br] 別の都幹部は「宣言も効かなかったのに、重点措置にどこまで効果があるのか。現行の対策ではもう限界かもしれない」と認める。[br][br] ▽決断[br] コロナ対応の特別措置法は、知事は重点措置の適用を首相に要請できると規定。しかし決断主体は首相で、要請待ちの姿勢は危機意識の欠如と映る可能性もある。さらに専門家からは、重点措置だけでは不十分で「できることは県境をまたぐ移動の制限を求めることに尽きる」(釜萢氏)との声も上がる。[br][br] 東大の大澤幸生教授(人間行動分析)は「政府が宣言ではなく重点措置を適用することで、感染状況が深刻ではないと誤った感覚を持たれる恐れがある」と指摘。「国民の側も長距離移動は一層の感染拡大を招くリスクが高いことを認識してほしい」と話した。 東京都が公表した新規感染者数の試算