【日銀金融政策修正】物価目標かすみ「漂流」 コロナ後の再生不透明

 日銀の金融政策の歴史
 日銀の金融政策の歴史
日銀が金融緩和の長期化を見据え、副作用を軽減する政策修正を決めた。黒田東彦総裁の下、大胆な緩和策を続けながら物価上昇目標の達成が遠くかすんだ今の日銀に対しては「漂流」(前日銀総裁の白川方明氏)との厳しい声も上がる。真の課題とされる生産性向上.....
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 日銀が金融緩和の長期化を見据え、副作用を軽減する政策修正を決めた。黒田東彦総裁の下、大胆な緩和策を続けながら物価上昇目標の達成が遠くかすんだ今の日銀に対しては「漂流」(前日銀総裁の白川方明氏)との厳しい声も上がる。真の課題とされる生産性向上は置き去りで、新型コロナウイルス禍を乗り越えた先の日本経済再生の道筋は見えてこない。[br][br] ▽真の課題[br][br] 「強力な緩和を粘り強く続けることで物価目標を達成できる」。黒田氏は19日の金融政策決定会合後の記者会見で、修正により政策の機動性を高めて2%の物価上昇を目指す意向を示した。金融機関を対象とした実質的な補助金制度を導入し、マイナス金利の拡大が現実的な緩和手段であることも明確にした。[br][br] 日銀は今回の政策点検で、金融緩和による市場機能の低下や金融機関の収益低下に言及し、副作用を率直に認めた。元日銀審議委員の白井さゆり氏は「(現行政策を)やめるにやめられない中で柔軟性を持たせた」と修正の狙いを分析する。[br][br] 前総裁の白川氏は、金融政策を通じて人々の期待に働き掛ければ物価が上がると考える黒田路線にかねて懐疑的だった。その行き詰まりがはっきりした今、雑誌「世界」に寄稿した論文で「日本経済の真の課題は物価ではなく、生産性上昇率の引き上げにあることが広く理解されるようになった」と解説した。[br][br] ▽614兆円[br][br] 日銀は20年前の2001年3月19日、国債などを買い取って市中にお金を流し込む量的緩和を決定。主要国で初めて、利下げとは異なる「非伝統的政策」に踏み切った。その後も試行錯誤の緩和策が重ねられてきた中で、賛否両論の大きな議論を巻き起こしたのが黒田氏の「異次元緩和」だった。[br][br] 大規模な国債買い入れで、日銀のお金の供給量は21年2月末に614兆円に膨れ上がった。政府の債務残高は3月末で1292兆円を見込み、20年前の2・4倍となる。現在、国債発行残高の4割超を日銀が保有し、日銀が誘導する超低金利が政府の利払い負担を抑える構図がある。[br][br] この間、日本経済の実力を示す潜在成長率は最も高い時期で1・2%にとどまっている。法政大の水野和夫教授は「金融緩和と財政出動にどれほどの効果があったかは疑問だ」と指摘する。[br][br] ▽開き直り[br][br] かつて政府はデフレ脱却に向け、日銀に物価目標の導入を迫ったが、今も重視しているかどうかは疑わしい。安倍晋三前首相は昨年11月の自民党会合で、自身が主導した金融緩和で「完全雇用に近い状況をつくった」と自賛する一方、物価目標の未達を問題視する意見に「分かっていない議論と思う」と開き直ってみせた。[br][br] 「誰のための政策点検だったのか」。あるエコノミストは、51ページに及ぶ公表文で政策の正当性を訴えた日銀の姿勢に首をかしげた。総裁就任から間もなく8年を迎える黒田氏は、2%の物価目標達成時期を明言することを避け続けている。 日銀の金融政策の歴史