【北奥羽のクマ事情】(8)撮影時は距離感が大切

樹上のニホンツキノワグマ=2020年9月、青森県十和田市宇樽部
樹上のニホンツキノワグマ=2020年9月、青森県十和田市宇樽部
クマの撮影では、距離感が大切だと感じています。また、相手に自分の存在を気付かせることも重要です。近づき過ぎて突然姿を現すと、クマもびっくりして、排除しようと反撃することがあります。事故の大半はこのケースと言えます。 大抵はクマから匂いや気配.....
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 クマの撮影では、距離感が大切だと感じています。また、相手に自分の存在を気付かせることも重要です。近づき過ぎて突然姿を現すと、クマもびっくりして、排除しようと反撃することがあります。事故の大半はこのケースと言えます。[br][br] 大抵はクマから匂いや気配に気付いて避けるのですが、食料に集中している時は気付かないこともあります。また、中には人の持っている食料の味を知って寄ってくる個体もいることは頭に入れておきたいところです。[br][br] このようなケースでは、熊鈴などは逆効果かもしれません。ザックを熊に取られたという事例も起きています。クマは中に食料があることを知っています。そして、いったん狙いを定めた獲物には、極めて強く執着する性質があります。取り返そうとするのは大変危険です。[br][br] 獲物の対象には、残念なことに人も(出合い頭の襲撃で倒れた場合など特に)含まれ、第6回で紹介した事件のようなケースも起きます。[br][br] 星野道夫(1952~1996)という写真家をご存じかと思います。昨年、私は秋田県鹿角市十和田大湯の熊取平で撮影中、星野さんの先輩を名乗る写真家と会いました。ロシアでヒョウやヒグマを撮影している福田俊司さん。コロナ禍で渡航できずやってきたとのこと。普段、国内では栃木県足尾町でクマを撮っているそうです。[br][br] 福田さんによると、星野さんは96年、カムチャツカで東京のテレビ局スタッフと動物番組の撮影中でした。観察小屋が小さく、また写真を撮りたくてテント泊にしたのかもしれません。その結果、ヒグマに襲われ命を落とした事件はご存じだと思います。[br][br] 私は、福田さんに「星野は生物の食物連鎖のサイクルに入ったと、美化された感がある。でも、それはいけない。殺してもいいから殺されるな」と教わりました。肝に銘じたいと思います。[br][br] しかし、私たちにできる対策は熊スプレー(唐辛子エキスのスプレー。クマが3メートルくらいに近づいたら噴射)くらいでしょうか。繰り返しますが、危険な動物の撮影では距離感が大切。しかし過信は絶対禁物です。樹上のニホンツキノワグマ=2020年9月、青森県十和田市宇樽部