むつ市の使用済み核燃料中間貯蔵施設が注目を集めている。発端は、運転開始から40年を超えた福井県内の原発再稼働を目指す関西電力の動きにある。再稼働を議論する前提として、原発の使用済み核燃料を一時保管する県外候補地を示すよう求めていた福井県に対して2月、むつ中間貯蔵施設を電力各社が共同利用する案を「選択肢の一つ」として提示した。[br][br] 市は「共用化について認めた事実も、議論を開始している事実もない」とし、既成事実のように扱う関電を非難。関電がむつ中間貯蔵施設を県外搬出先の候補として提示することや、共用化が選択肢の一つとなるようなことはあり得ないとの見解を示している。[br][br] 地元を差し置き、勝手に交渉材料にするような行為は地方自治を軽視するもので、早期再稼働を目指すがゆえの自己都合と言わざるを得ない。そもそも市が認めていないものが案となり得るのか。提示された福井県も判断に窮するのではないか。[br][br] 共用案は昨年12月、大手電力でつくる電気事業連合会が「業界全体で貯蔵の補完性、柔軟性を高める」と意義を強調し、市と青森県に「検討に着手したい」と表明した。宮下宗一郎市長は「共用化ありきの議論はできない」と受け入れなかった。[br][br] 宮下市長は電事連と面会した際、使用済み核燃料を貯蔵した後、リサイクル燃料として処理する搬出先の問題などを懸案事項として伝えた。共用案以前の中間貯蔵事業そのものを問うもので、核燃料サイクル全体の問題でもある。サイクルが行き詰まる中、なし崩し的に核のゴミ捨て場にされる可能性に懸念を抱くのは当然である。[br][br] 東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故以降、原子力や立地自治体に対する風当たりは強まっている。市では市民の賛否が二分する中、市長選や市議選で是非を争い、中間貯蔵施設を誘致した歴史がある。こうした経緯を重く受け止め、市政発展のために中間貯蔵事業を進めようとしている。[br][br] むつ中間貯蔵施設は東電、日本原子力発電の使用済み核燃料搬入を想定する。共用案は協定をほごにするのか。施設があるからという理由だけで、全国の原発の使用済み核燃料を押し付けられることがあってはならない。宮下市長が電事連に伝えたように、全国で探すプロセスがあってしかるべきである。[br][br] 仮に今後、交渉があったとしても、今回の関電の対応に市も市議会も不信感を募らせているのは間違いない。