【災害住宅高齢化】コミュニティー瓦解危機

 災害公営住宅の退去世帯
 災害公営住宅の退去世帯
東日本大震災の被災住民向けに整備された災害公営住宅では、高齢入居者の死亡や住宅再建に伴う退去で、せっかく築き上げた新たな地域コミュニティーが瓦解(がかい)しかねない所も出てきた。歯止めをかけようと、移住者の呼び込みに活路を見いだす自治体もあ.....
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 東日本大震災の被災住民向けに整備された災害公営住宅では、高齢入居者の死亡や住宅再建に伴う退去で、せっかく築き上げた新たな地域コミュニティーが瓦解(がかい)しかねない所も出てきた。歯止めをかけようと、移住者の呼び込みに活路を見いだす自治体もある。[br][br] ▽家賃上昇[br][br] 被災者を中心に約140世帯が暮らす岩手県大船渡市の県営みどり町アパート。昨年末から今年2月にかけ、自治会を運営する役員の男性2人が相次いで退去した。会長の飯島真由美さん(53)は「一緒に自治会を立ち上げ、ようやく軌道に乗せることができたのに」と肩を落とす。[br][br] 自治会は各地から集まった住人同士の交流を増やすため2017年発足。定期的な清掃活動や映画鑑賞会の他、住人の3分の1を占める75歳以上の高齢者が孤立しないよう敬老会も続けてきた。[br][br] しかし、若い世代の流出が後を絶たず、当初約20人いた役員も一時期は半分程度になった。[br][br] 災害公営住宅は収入に応じて家賃が定まる。飯島さんも市から今年4月以降の家賃が上がると言われ、収入のあった同居の長女が退去することになった。「10年たっても支援が必要な人がいる。生活が落ち着いたから出て行けというのは納得できない」[br][br] ▽取り残され[br][br] 共同通信の調査によると、東北3県の災害公営住宅では18年以降、年間約1200~1400世帯が退去している。 自治体に退去の主な理由を複数回答で尋ねると、7割超が「高齢居住者の入院、施設入所、死亡」を挙げる。一方でマイホームを建てて移り住む「住宅再建」が約5割、「家賃の上昇や収入超過」も約2割あり、収入のある若者世帯が出ていく傾向も現れている。[br][br] 収入が一定基準を超えた住人は退去を求められる場合がある。3県で計約1300世帯が基準超過世帯だ。[br][br] 空室率は3県全体で8%だが、自治体によっては40%を超え、同じ自治体内でも立地による差が大きい。今後退去が加速し、高齢者や生活困窮者ばかりが取り残される恐れもある。[br][br] ▽お試し移住[br][br] 空室問題を逆手に取り、地域活性化の起爆剤にしようとする自治体もある。宮城県気仙沼市は移住者への貸し出しに取り組む。市内の空室約90戸のうち、しばらく応募がなかった13戸で昨年12月に募集を開始。家賃を1万~1万3千円に設定すると、1カ月足らずで全て埋まった。[br][br] 市の出身者や新規の漁業従事者、市内の企業に就職する新入社員など顔触れはさまざまだが、応募者の7割は10~30代の若者という。[br][br] 入居期間は原則1年。地域に溶け込んでもらおうと、自治会への入会と活動参加を呼び掛けている。今年4月には、入居期間を短くした「お試し移住」用の貸し出し募集も始める予定だ。[br][br] 市震災復興・企画課の赤坂勇磨あかさかゆうま副参事は「震災をきっかけに気仙沼と関わった人は多い。定住してもらい、地域コミュニティーの維持につながれば」と期待している。 災害公営住宅の退去世帯