【コロナ変異株拡大】流行の主役、交代の恐れ

 新型コロナウイルス感染者の検体から変異株の有無を調べる人=1月、デンマーク北部オールボー(ロイター=共同)
 新型コロナウイルス感染者の検体から変異株の有無を調べる人=1月、デンマーク北部オールボー(ロイター=共同)
遺伝子の変化で新たな性質を獲得した新型コロナウイルス変異株の流入が本格化している。政府は水際での監視を強めるが、従来よりも感染力が強く「既存株から置き換わりつつある」(研究者)との声も上がる。今後、変異株が国内で広がって流行の主役が交代すれ.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 遺伝子の変化で新たな性質を獲得した新型コロナウイルス変異株の流入が本格化している。政府は水際での監視を強めるが、従来よりも感染力が強く「既存株から置き換わりつつある」(研究者)との声も上がる。今後、変異株が国内で広がって流行の主役が交代すれば、新たな火種となり、国内の「第4波」を起こしかねない。関係者は危機感を強めている。[br][br] ▽3種類[br][br] 昨年1月、最初に流入したのは中国・武漢で見つかったウイルスだったが、3月ごろに始まった流行第1波は欧州のウイルスが引き起こした。[br][br] 日本感染症学会によると新型コロナの変異は2週間に1回ぐらい起きる。世界各国で流行が続く中、多くの変異株が生まれたはずだが、残ったのはその中の一握りだ。[br][br] 現在、最も警戒されている変異株は、英国と南アフリカ、ブラジルで流行が始まった3種類。共通するのは、ウイルス表面にあるタンパク質の一種が置き換わり、感染しやすくなったとされる点だ。英国株の場合、最大で7割ほど感染力が強まったとの試算もある。[br][br] 南ア株とブラジル株は「E484K」と呼ばれる変異も備えており、このウイルスに対する人間の免疫を弱める性質を持つようだ。英製薬大手アストラゼネカ製ワクチンは南ア株に効きにくいとの報告も出ている。[br][br] ▽新たな脅威[br][br] 英南東部ケント州で昨年9月に初確認されたとみられる英国株は、せきや倦怠(けんたい)感が出やすい。英国内の新規感染者の約9割を占めるとされる。[br][br] 流入を防ごうと、欧州各国は水際対策を強化したが失敗。フランスでは、2月中旬時点で英国株が新規感染者の半数に迫っている。感染力の強さが災いしたのか、既に世界約90カ国に広まった。[br][br] 南ア株は約45カ国、ブラジル株も20カ国以上に拡大。欧州では変異株同士の混合型も見つかっており、感染力が強くワクチンが効かない「スーパー変異株」(英紙サン)の脅威も叫ばれている。[br][br] 英ウォーリック大のローレンス・ヤング教授(ウイルス学)は同紙に「むしろ混合型の確認がなぜ世界でまだ少ないのか驚きだ」と警告した。[br][br] ▽焦り[br][br] 変異株の日本上陸が確認されたのは昨年末。英国から到着した5人の感染が空港検疫で判明すると、直後に英国渡航歴のない人が国内で二次感染した例も明らかになった。埼玉県などでは職場や子どもが通う施設に関係するクラスター(感染者集団)とみられる事例も発生し、既に多くの自治体に広まった。[br][br] 神戸市が1~2月に行った検査によれば、新型コロナ全体の感染者は減ったが、1月下旬~2月上旬に4・6%を占めていた変異株感染者は、2月中旬には15・2%へと急増していた。[br][br] 政府は変異株の検査を強化する構えだが、新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は「ほぼ間違いなく変異株が増えていく」と遅れがちな対策に焦りの色を見せる。[br][br] まだ名前の付いていない、新しい変異株も出現している。国立感染症研究所は2月、E484K変異を持つ新たなタイプを検疫と関東で90例以上検出したと公表した。[br][br] 中島一敏大東文化大教授(感染症疫学)は、「渡航歴のない症例が増えてきており、検出地域も広がっている」と指摘。減少しつつある感染者数の再拡大に危機感を強めている。 新型コロナウイルス感染者の検体から変異株の有無を調べる人=1月、デンマーク北部オールボー(ロイター=共同)