【連載・つながる復興道】(4)光と影

休業を知らせる「鬼は内」本店の張り紙。新型コロナウイルス感染拡大に加え、交通量の減少も影響した=2月中旬、久慈市夏井町
休業を知らせる「鬼は内」本店の張り紙。新型コロナウイルス感染拡大に加え、交通量の減少も影響した=2月中旬、久慈市夏井町
2020年5月、久慈市夏井町の国道45号沿いに立地するそば店「鬼は内」の本店に、休業を知らせる紙が張り出された。手打ちそばや米2合を使った巨大なおにぎりが名物で、市内外に多くのファンを抱える人気店だ。 最大の要因は、新型コロナウイルス感染症.....
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2020年5月、久慈市夏井町の国道45号沿いに立地するそば店「鬼は内」の本店に、休業を知らせる紙が張り出された。手打ちそばや米2合を使った巨大なおにぎりが名物で、市内外に多くのファンを抱える人気店だ。[br][br] 最大の要因は、新型コロナウイルス感染症による客足の減少。ただ、その2カ月前に三陸沿岸道路の侍浜インターチェンジ(IC)―久慈北IC間が開通し、店舗前の交通量が激減したことも響いた。[br][br] 国土交通省東北地方整備局が開通直後に実施した調査によると、久慈北道路の交通量は1日最大7600台。開通前の国道45号の交通量は約1万台で、8割が三陸道に転換した。[br][br] 小向有店長(57)は「新型コロナとほぼ同時期だったため、開通による客足の変化は計りづらいが、少なからず影響はあった」と語る。1985年の開業以来、ひっきりなしに車が往来していた店舗前の光景は一変した。「夜はこんなに真っ暗だったのかと驚いた」と苦笑いする。[br][br] 市中心部に近い田屋町にある2号店で営業を続ける。本店の再開を望む声も多いが、小向店長は「コロナが収束しても、交通量が増えるわけではない。以前の売り上げに戻るかどうか」と、再開時期の難しい判断を迫られている。[br][br]   ◆    ◇[br][br] 三陸沿岸道路という大動脈の誕生で人、物の流れは変わる。地域経済に恩恵がある一方で、沿岸をつなぐ唯一の道だった国道45号の存在感の低下は避けられず、国道沿いの事業者は“素通り”を懸念する。[br][br] 洋野町種市の「たねいち産直ふれあい広場」。海や山の幸がそろう産直とテナント7店が並び、年間約17万人が訪れる。昨年12月に階上IC―種市IC間が開通した影響は今のところ見られないが、南に延伸する3月以降の変化を注視している。[br][br] 最寄りの種市ICは国が最終的にフルIC化する方針を決めたが、当面は久慈方面からは降りられないハーフICのまま。運営協議会事務局の舘野栄子さん(新岩手農協)は「会員からは心配する声もある。他にない商品を並べて差別化を図っていくしかない」と語り、盛岡市の人気店「福田パン」の販売や100円均一コーナーの開設、会員による新メニュー開発など、集客に知恵を絞る。[br][br]   ◆    ◇[br][br] 開通効果を取り込んだ施設もある。道の駅はしかみ(階上町)では、13年に八戸南道路(8・7キロ)が完成した後、施設前の国道45号の交通量は減少したが、入り込み数は微増した。地元や八戸市の固定客に加え、上北地域や岩手県内から訪れる人が目立つようになった。[br][br] 事務局を置く町産業振興課の平戸真澄グループリーダーは「当初は心配したが、ふたを開けてみれば良かった」と振り返る。品ぞろえを増やしたほか、18年にオープンした「はしかみハマの駅あるでぃ~ば」との相乗効果もあったとみられる。「岩手、宮城両県からの観光客増加に期待したい」と、今年中の全線開通も好機と捉えている。[br][br]連載(1)「変わる流れ」 https://www.daily-tohoku.news/archives/57475[br]連載(2)「八戸の優位性」 https://www.daily-tohoku.news/archives/57562[br]連載(3)「復興バブルの終焉」 https://www.daily-tohoku.news/archives/57653休業を知らせる「鬼は内」本店の張り紙。新型コロナウイルス感染拡大に加え、交通量の減少も影響した=2月中旬、久慈市夏井町