福岡県篠栗町で5歳だった男児を衰弱死させたとして、母親の碇利恵容疑者(39)と知人の赤堀恵美子容疑者(48)が逮捕された事件では、赤堀容疑者が生活費を詐取し続けた上、食事量まで制限するなど異様な関係が浮かび上がった。赤堀容疑者のうそを信じ、夫と離婚。事件後、男児の兄2人は児童相談所に保護され、一家はバラバラに。捜査幹部は「妄信的に信頼するに至った経緯を明らかにすることが、事件解明の鍵だ」と指摘する。[br][br] ▽暗転[br][br] 「ボスが浮気調査費を立て替えた」「ボスが食べ過ぎと言っている。監視カメラで見張っているから」。碇容疑者から現金をだまし取ったなどとして、詐欺や窃盗罪でも起訴された赤堀容疑者。共通の「ママ友」の一人を架空の「ボス」に仕立てるなどして、碇容疑者が自身に依存する関係をつくっていったとみられる。[br][br] 知人らは夫と死亡した翔士郎ちゃんを含む子ども3人と暮らす碇容疑者一家について「誰もがうらやむような良い家族だった」と口をそろえる。だが、その幸せは赤堀容疑者との関係を深めていく中で暗転していったという。[br][br] 「夫が浮気をしている」。碇容疑者に繰り返しうそを吹き込んだ赤堀容疑者。その結果、夫婦は離婚。碇容疑者は子ども3人とともに自宅を出て、近くのマンションで暮らすようになった。[br][br] 別の捜査幹部は「さらに金をだまし取るために夫と引き離したのだろう。『浮気を知らせてくれた』と碇容疑者からの信頼も高まったのではないか」とみる。離婚後、赤堀容疑者による関与の度合いはさらに増すことになる。[br][br] ▽支配[br][br] 「光熱費を払ってやった」「育児放棄(ネグレクト)しているから面倒をみてやっている」と周囲に吹聴、頻繁にマンションに出入りするようになった赤堀容疑者。離婚訴訟費名目などで詐取したのは生活保護費や児童手当などで、立件されただけで計約200万円に上る。給食費を滞納するなど一家は日々の生活に困窮するようになった。[br][br] 2020年4月にあった翔士郎ちゃんの通夜の翌日。談笑しながら一緒に買い物からマンションに戻る2人の姿があった。近隣住民の一人はいぶかしげに話す。「子どもが亡くなった直後で、普通なら笑ったりできない。そこまで心理的に支配されていたのか」