【東京五輪・パラ】「男女平等」理念と現実 騒動から変革の動き

 東京五輪・パラリンピックの大会ビジョン
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「多様性と調和」を大会ビジョンの一つとする東京五輪・パラリンピックは、組織委員会の森喜朗前会長による女性蔑視発言で理念と現実の隔たりが浮き彫りになった。ボランティアの辞退者が相次ぎ、スポンサーも声を上げて国際的な騒動に発展。開幕まで半年を切.....
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 「多様性と調和」を大会ビジョンの一つとする東京五輪・パラリンピックは、組織委員会の森喜朗前会長による女性蔑視発言で理念と現実の隔たりが浮き彫りになった。ボランティアの辞退者が相次ぎ、スポンサーも声を上げて国際的な騒動に発展。開幕まで半年を切った時期のトップ交代で新会長に就任した橋本聖子氏は「男女平等」を改革の柱に掲げ、旧態依然とした体質を変える動きが急ピッチで進む。[br][br] ▽罪悪感[br] 「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」「組織委の女性はわきまえている」。2月3日、日本オリンピック委員会(JOC)の評議員会。森氏が辞任する引き金となった発言に、周囲からとがめる声はなかった。日増しに高まった批判。その場にいた男性評議員の一人は今、こう告白する。「何もしなかった人間の一人なんだよ。本当に悔しくて、自分が情けない」。発言できなかった罪悪感にかられ、おえつを漏らした。[br][br] 今回の問題で露呈したのは、根深く残る日本の男性優位社会だった。首相時代から失言の多かった森氏の発言に、政府内からも「不適切だが、そこまで責められることか」との見解が多く、時間がたてば沈静化するとの希望的観測があった。[br][br] ▽トヨタも遺憾[br] 誰もが意見を発信できる今のインターネット社会で、反発は止まるどころか増幅した。会員制交流サイト(SNS)で「#わきまえない女」といった検索目印(ハッシュタグ)を付けた投稿が拡散。オンラインでの署名活動は15万筆以上集まり、発起人の一人は「毎回許されてきたから今の日本社会がある。今、自分たちが声を上げられるからこそやらないといけない」と語った。[br][br] 五輪憲章ではあらゆる差別の撤廃が基本原則に掲げられ、大会の最高位スポンサーのトヨタ自動車は「遺憾」を表明する異例のコメントを発表。多様性の推進が当たり前の時代に逆行する発言に「NO」を突き付けた。[br][br] 日本スポーツ界の実態も浮かび上がり、城西大の山口理恵子准教授(スポーツジェンダー)は「年配の男性たちばかりといった同質集団になると組織そのものが動かない。だからここまで来てしまった。今回の森発言で、うみが出た。自分事として考える大きな契機となった」と指摘する。[br][br] ▽女性理事4割へ[br] 「スピード感」をキーワードに、目に見える変化を約束する橋本会長は女性理事の割合を4割に引き上げる方針を打ち出し、小谷実可子氏をトップとする「ジェンダー平等推進チーム」を発足させた。これまで黒人差別への抗議など社会問題に対して積極的に発信してきた女子テニスの大坂なおみ選手(日清食品)も「女性にとっての壁が壊されてきている。とてもいいこと」と期待を寄せる。未来へ継承できるレガシー(遺産)として、五輪開催国の変革が今こそ求められている。 東京五輪・パラリンピックの大会ビジョン