八戸市が青森県新産業都市建設事業団(理事長・三村申吾知事)に委託した桔梗野と八戸北インターの市内2工業用地造成事業が2020年度末で完了する見通しとなった。土地の分譲が進展し、製造業を中心に幅広い企業が集積。北東北随一の産業都市を形成する上で、重要な基盤整備として大きな役割を果たしたと言えよう。[br][br] 桔梗野は1973年度から事業がスタート。団地内には製造業や物流業といったさまざまな企業が操業している。分譲した用地は59・1ヘクタール、分譲率は90・9%。工業用地に適さない軟弱地盤の土地を含めれば99・7%とほぼ完売状態となっていた。[br][br] 八戸北インターは90年度に事業開始。製造業を中心に企業立地が進み、分譲した用地は94・1ヘクタール、分譲率は94・6%に上る。高台に位置するため、津波の危険性が低く、東日本大震災以降も企業進出が相次いだ。[br][br] 八戸市によると、製造業の事業所から出荷した製品の総額などを示す「製造品出荷額等」は、2018年は5691億円に上り、1963年の298億円の19倍に成長。素材産業や飼料コンビナートがある臨海工業地帯に加え、多様な企業が集積する桔梗野、八戸北インターの2工業団地は地域経済をけん引する原動力となった。[br][br] 一方、桔梗野の事業を巡っては、1980年代に軟弱地盤問題が浮上。立地した企業からの土地の買い戻しや移転補償費、借入金の金利負担など有利子負債への対応を怠り、総額42億6200万円の負債処理に追われた。事業の委託元である八戸市は2010年、負債解消に向けた計画を策定。このうち市の負担は28億2千万円で、市が年間約8千万円を返済していた。[br][br] 今回の事業終了は八戸北インターの分譲進展を受け、市が事業団に申し入れた。市は桔梗野の多額負債を八戸北インターの分譲で生じた剰余金などを充て前倒しで返済し、財政負担の低減を図る考えだ。結果的に多額の血税を投入する事態になったことは教訓にしてもらいたい。[br][br] 事業団は、残る金矢工業用地造成事業(六戸町)を21年度末までに委託元の県に移管し、解散する方向だ。全国各地で設置された地方開発事業団は姿を消すこととなる。[br][br] 今後も企業誘致を推進する八戸市は、八戸北インターの南側に「八戸北インター第2工業団地」を造成し、24年度中の分譲開始を目指している。企業の八戸進出の機会を逃さないよう、新産業団地の整備を早急に進めてほしい。