海洋研究開発機構(JAMSTEC)が、北極海周辺の北極域の海洋調査や気象観測に当たる「北極域研究船」の新造計画を進めている。新造船は、運航中の研究船「みらい」(母港・むつ市関根浜港)が担う役割や機能を引き継げるような造りとし、高い砕氷機能を持たせる。2021年度から建造し、26年度の就航を目指す。同機構は母港について「検討中」としているが、新造船は、みらいの後継船にもなり得ることから、引き続き同港が母港となる可能性もある。[br][br] 環境変化のメカニズムに関する科学的知見が十分に得られていない北極域の調査は、現在、原子力船「むつ」の原子炉を取り外して改造した、みらいが担っている。[br][br] ただ、みらいは氷を砕いて進む砕氷機能が低く、氷が薄くなる夏などに、限られた場所でしか調査ができなかった。老朽化も進んでおり、一般的な船の運用年数も限界が近づいている。文部科学省の有識者会議も新たな研究船の必要性を指摘していた。[br][br] 新造船は、全長128メートル、幅23メートルで、99人乗りの見込み。費用は約335億円を想定。高い砕氷機能を持たせ、氷が残る春や初冬でも調査や観測が可能な造りとする。[br][br] 就航後は、北極域で大気や海中を観測し、気候予測などに生かす計画。地球規模で生じる台風の進路の変化や、気温上昇の予測精度を高めることも期待ができるという。[br][br] 一方、海氷が減った北極海は、中国やロシアが、アジア―欧州間の輸送時間を大幅に短縮できる新航路として、「北極海航路」の開拓を進めている。[br][br] 日本も氷が船体にぶつかった際の影響など、安全に航行するためのデータ収集を進め、民間船による北極海航路の航行支援に生かしたい考えだ。 母港については、引き続き関根浜港となる可能性もあるが、同機構は「検討中」と強調。みらいの今後の運用計画や、船や港の規模などを考慮した上で決めるとしている。