時評(1月27日)

新型コロナウイルスのワクチン接種に向け、政府が体制整備を急いでいる。既に英米など海外で接種が進み、国内の感染拡大がなかなか収まらないだけにワクチンへの期待は大きい。 だが、ワクチンは実績のない新タイプで、国民のほぼ全員を対象にした例を見ない.....
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 新型コロナウイルスのワクチン接種に向け、政府が体制整備を急いでいる。既に英米など海外で接種が進み、国内の感染拡大がなかなか収まらないだけにワクチンへの期待は大きい。[br][br] だが、ワクチンは実績のない新タイプで、国民のほぼ全員を対象にした例を見ない集団接種だ。安心して安全に接種を受けられることが大前提で課題は多い。徹底した情報開示と緻密な接種体制づくりを求めたい。[br][br] 菅義偉首相は河野太郎行政改革担当相を接種実施の司令塔に指名。参院本会議では「3億1千万回分を確保できる見込みだ」と強調した。政府は2月下旬を目標に医療関係者から接種を始め、以降高齢者から順次拡大する計画だ。計画は順調に進んでほしいが、政府の積極姿勢をアピールする「スケジュールありき」は許されない。[br][br] 接種を受ける国民のほか、実務を担う自治体や医療機関の関係者ら多くの人が直接関わる国の大事業となる。最重要課題は安全性の確認だ。日本は米製薬大手ファイザーなど欧米3社からワクチンの供給を受ける。いずれも初めて遺伝子技術を使ったワクチン。海外での臨床試験(治験)データに国内の200人前後の治験結果を加味して国内承認される見込みだ。[br][br] 国内での接種が急がれるため、国内治験データが少ないのはやむを得ない。しかし有効性だけでなく、副反応に関する詳細なデータが開示され、承認に至る根拠も正確に説明されなければならない。これが接種開始の出発点になる。[br][br] 接種実務の環境づくりもしっかり進めてほしい。自治体の担当部署立ち上げのほか、ワクチンを保管する冷凍庫の配備や会場、医療スタッフの確保は容易ではない。接種は原則2回必要で、同一種でなければならない。細心の注意が必要な作業となるが、既に疲弊している保健行政や医療現場の負担増を避けなければならない。[br][br] ワクチンはいずれも海外の治験で高い有効性は示されているものの、肝心の効果の持続期間など、まだ不明なことは多い。インフルエンザワクチンのように定期的な接種が必要になる、と指摘する専門家は多い。[br][br] 決定的な治療薬がないために人々がワクチンに期待するのは自然なことだ。個人の意思尊重が大原則で、集団免疫を目指すための強制は許されない。感染リスクがなくならない中で、ワクチンの効果とリスクを見極める。この判断が一人一人に求められるだけに情報開示が極めて大切となる。