天鐘(1月27日)

岩手県や宮城県では昔、店頭で「モウス(モウシ)」と店員に声を掛け、買いたい物を伝えた。「言う」の謙譲語「申す」で、元来、客が使用人などに主人への取り次ぎを求める際に使った言葉だという▼「物申す」の略で「ス」を省いた「モノモウ」もある。奈良県.....
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 岩手県や宮城県では昔、店頭で「モウス(モウシ)」と店員に声を掛け、買いたい物を伝えた。「言う」の謙譲語「申す」で、元来、客が使用人などに主人への取り次ぎを求める際に使った言葉だという▼「物申す」の略で「ス」を省いた「モノモウ」もある。奈良県の一部地方で「ウ」も略した挨拶「モノモ」も使われる(柳田国男著『毎日の言葉』)とか。呼び掛けは八戸地方の「カール(買う)」も一緒だ▼普通「モウシ」で気付くが急ぎには「モシモシ」。1890年の電話開通時には高級官僚が「オイ」と呼び出し、交換手は「はい、ようござんす」と繋(つな)いだ。後に「申し上げます」を重ね「モシモシ」に定着した▼忙中でも謙譲の美徳がこもる「モシモシ」と思っていたら、今のビジネス界では“NG”とか。ネットでは「砕けた言葉で失敬な印象を与えるので他の言葉に置き換えよ」とまで言い切っている。驚きである▼謙譲を2度重ねした長年にわたる慣用の敬語に「失敬」とは些(いささ)か過剰反応ではないか。でも「モシモシ」は「申し上げます」の略語でカジュアルな言葉。目上の人や改まった場面ではタブーだと取り付く島もない▼周囲に聞いてみても「電話はモシモシだろう」とブレはない。気付かないところで時代も言葉も怒濤(どとう)の変化を遂げているのだろうか? モシモーシ! 柳田さーん、時代は大きく変わっていますよぉ!。