天鐘(1月18日)

吉田兼好は『徒然草』の「万の道の人…」(一八七段)で、上手(うま)い素人より下手な玄人の方がよっぽどましだと言い切っている。玄人は油断せずに慎重だが、器用な素人は勝手気ままでそのうち失敗するからだという▼万事において玄人を好む兼好さんの達観.....
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 吉田兼好は『徒然草』の「万の道の人…」(一八七段)で、上手(うま)い素人より下手な玄人の方がよっぽどましだと言い切っている。玄人は油断せずに慎重だが、器用な素人は勝手気ままでそのうち失敗するからだという▼万事において玄人を好む兼好さんの達観である。得意げな素人芸や下手の横好きは認めない。まして人の説を鵜呑(うの)みにした“受け売り”などは最も嫌うところだろう▼今は自粛中だが、菅首相の日課はホテルで有識者との朝昼食。竹中平蔵パソナグループ会長らその道のプロの卓見が政策の参考になるのだとか。確かに人は財産だが、いいとこ取りしがちな素人の思い込みが怖い▼総裁選は二階俊博幹事長との二人三脚で制したが、無派閥ゆえの基盤の弱さは否めない。“虎の威を借(か)る官房長官”時代、官僚の忖度(そんたく)を生んだ人事と情報は機能せず、笛吹けど踊らず状態に陥っているらしい▼コロナとの闘いの鍵を握るGoTo事業に緊急事態宣言、入国制限の重要施策も全てちぐはぐ。「肝いり」の割に主体性がなく朝令暮改。世論や知事会の動きに押されては後手に回り、内閣支持率で大きくぶれる▼今日からコロナ国会が始まる。珍答弁で迷走する首相に自民党内からも「遅い、鈍い、軽い」と批判の声が。分断を煽(あお)る権謀術数や小手先の素人芸はもう通らない。国民を結束する心からの声にこそコロナは竦(すく)み上がるに違いない。