【北奥羽丑(うし)物語】(2)福一満虚空蔵菩薩堂の臥牛像(八戸市南郷)

地元の人々の信仰を集める「虚空蔵さん」の臥牛像=2020年12月、八戸市
地元の人々の信仰を集める「虚空蔵さん」の臥牛像=2020年12月、八戸市
2021年は丑(うし)年。私たち人間は、古くから農耕や運搬の労力として牛の力を借り、命を頂いて肉を味わってきた。冷涼で自然豊かな北奥羽地域は牛の生育に適した環境で、畜産も盛ん。各地で特徴のある肉牛や乳製品が生産され、闘牛などの独自文化も息づ.....
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 2021年は丑(うし)年。私たち人間は、古くから農耕や運搬の労力として牛の力を借り、命を頂いて肉を味わってきた。冷涼で自然豊かな北奥羽地域は牛の生育に適した環境で、畜産も盛ん。各地で特徴のある肉牛や乳製品が生産され、闘牛などの独自文化も息づく。温厚でマイペースながら、強い意志を秘めた牛のイメージは、なんだか南部人の気質にもつながる。丑年をきっかけに、身近な牛について理解を深めよう。[br][br]◇なでるとご利益 平穏祈り[br] 祈りの対象となっている牛もいる。住民から「虚空蔵(こくぞう)さん」と呼ばれ、親しまれる八戸市南郷島守の「福一満虚空蔵菩薩(ぼさつ)堂」に鎮座する臥牛(がぎゅう)像は、「なでるとご利益がある」と言い伝えられ、毎年6月に龍興山神社、高山神社と合同で行われる例大祭は、多くの参拝客でにぎわう。[br][br] 石像があるのは、虚空蔵菩薩が丑年と寅(とら)年生まれの守り本尊とされるためだ。菩薩堂と本尊を管理する瑞雲山高松寺の高田大寛住職によると、元々は約500メートル離れた新井田川に掛かる赤穂土橋の袂(たもと)に、大鳥居(おおとりい)があった。度々水害に見舞われる場所で、河川改修工事に伴い2002年、高山寺と南郷村観光協会(当時)が鳥居の代わりに牛と虎の石像を設置した。[br][br] 虚空蔵菩薩は宇宙のような無限の宝庫から知恵を取り出し、人々の願いをかなえるとされる。島守地区との関わりは古く、平家の落人伝説に由来するとの説も。史料では、1665年に八戸藩初代藩主の南部直房が絵馬を奉納し、2代藩主・直政が高山寺に菩薩像を納めたとされる。[br][br] 新たな年の平穏を祈りつつ、悠久の歴史に思いをはせてはいかがだろう。地元の人々の信仰を集める「虚空蔵さん」の臥牛像=2020年12月、八戸市