新型コロナウイルスに翻弄(ほんろう)された2020年が間もなく終わる。4月の「緊急事態宣言」で外出自粛を余儀なくされ、イベントは軒並み中止に。市民生活の疲弊、地域経済の苦境は今も続く。[br][br] 会いたい人に会えず涙をのんだ方もいるだろう。コロナに明け暮れたとはいえ、家族や友人との絆の大切さを実感させられた一年でもあった。[br][br] 北奥羽地方に関わる出来事を振り返ってみる。[br][br] 世界遺産登録を目指す北海道・北東北の縄文遺跡群では、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関であるイコモスの現地調査が9月に終了。来夏に審査されることが決まり、登録が目前に迫る。ただ、合否の鍵を握るイコモスの勧告内容は不明で、予断を許さない。積極的な情報発信を続けたい。[br] 二戸市の漆掻(か)き技術を含む「伝統建築工匠の技」は12月、一足先にユネスコの無形文化遺産に登録された。国産漆の需要が減り、安価な外国産が先行する厳しい時代もあったが、粘り強く技術を継承し、守り続けたことが結実。歴史と伝統に誇りを持ちつつ、担い手確保に努めながら、地域の活性化につなげていくことが求められよう。[br][br] 核のゴミを巡る問題にも大きな動きがあった。青森県内には多くの原子力関連施設が立地する。最終処分地が決まらず、「トイレなきマンション」と揶揄やゆされる現状下で、北海道の2町村が選定に向けた文献調査に名乗りを上げた。[br][br] 六ケ所村の施設では高レベル放射性廃棄物を一時貯蔵している。国は「青森県を最終処分地にしない」と確約しており、長年棚上げにしてきた約束を果たすため、前面に立って解決に取り組むべきだ。[br][br] 政治に対する信頼も大きく揺らいでいる。昨年の参院選広島選挙区を巡る公選法違反事件で、地元議員らに現金を配ったとして現職国会議員が逮捕され、「桜を見る会」の夕食会費補塡ほてん問題では安倍晋三前首相の秘書が略式起訴された。[br][br] 青森県内では官製談合の疑いで西目屋村長が逮捕された。繰り返される不祥事に、政治不信は高まるばかり。首長や議員は自らに科せられた命題と受け止め、襟を正す必要がある。[br][br] いまだコロナの感染拡大に歯止めがかからない。年末に見つかったウイルスの変異種も気掛かりだ。新たな年もコロナへの対応が第一の課題になろう。[br][br] 先が見通せないのが苦しい。それでも他人への思いやりを忘れず、困難に立ち向かいたい。