「瀬戸際」と何度言われたか。今年は世界史に残る危機の年だった。新型コロナウイルス流行は国内で第3波の重大局面を迎えた。新規感染や重症者が連日のように過去最多となっている。抑制には人の接触を減らすしかない。年末年始を静かに過ごすよう訴えたい。[br][br] 政府が提唱した「勝負の3週間」でも首都圏などで感染が加速、地方にも波及した。累計で国内の感染者は21万人、死者は3200人を超えた。病床不足のため自宅やホテルでの療養が増え、急変して亡くなる人も出た。失敗はもう許されない。[br][br] 医師会などが医療崩壊の窮状を伝えるのと対照的に政府の発信が弱い。観光支援事業「Go To トラベル」の全国一時停止はアクセルを少し緩めたにすぎない。対策は迷走して後手に回っている。[br][br] 現在は感染抑制こそが最大の経済対策といえる。気分が浮き立つ年末年始の人出抑制は難しいが、「感染を減らすチャンス」とも考え得る。いつもとは違う年末年始を前に菅首相は危機管理を担う覚悟が問われている。[br][br] 重症者の病床が逼迫(ひっぱく)する病院では懸命な治療が今も続く。年末年始に医療や検査が手薄にならずにしっかり持続できるよう、医療スタッフを励ます緊急支援を行きわたらせてほしい。[br][br] 政府は再度の緊急事態宣言を避ける方針だが、年末年始はそれに準じた態勢で臨む時だ。人が密集する正月のイベントを中止し、会食は少人数にとどめたい。初詣は三が日以外に分散し、対人距離を保つ節度も必要だ。[br][br] 重症者や死者の増加の連鎖を断つには感染を減少に転じさせることが欠かせない。感染が11月に急増した北海道では夜の繁華街の時短営業を早めに要請して人出が減り、拡大が止まった。この実績からも飲食店の時短強化が望ましい。同時に補償の充実を求めたい。[br][br] 各国ではワクチンの緊急使用が許可されて接種が始まった。日本でも来春には接種できる可能性が大きい。新型コロナに立ち向かう医療技術の進歩は目覚ましい。安全面に最大限注意しながら、ワクチンや薬のメリットを生かして流行を乗り越える道を探るべきだ。[br][br] 新型コロナは実態が見えにくく、変わり身も速い。英国で広がった感染力の強い変異種が日本でも確認された。遺伝子解析で変異の監視を強めたい。長期休暇の年末年始は外出自粛で感染を減らしやすい。欧米のような感染爆発を避けるためにも、その機会を逃してはいけない。