天鐘(12月27日)

「嘘(うそ)って、ついてもいいのかな?」。某小学校の授業で先生がこう問い掛けると、「だめ」が「いい」の倍を占めた。次に「嘘をついたことがある?」にはほとんどが手を挙げた▼話題の教材『答えのない道徳の問題 どう解く?』(ポプラ社)を使った授業.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 「嘘(うそ)って、ついてもいいのかな?」。某小学校の授業で先生がこう問い掛けると、「だめ」が「いい」の倍を占めた。次に「嘘をついたことがある?」にはほとんどが手を挙げた▼話題の教材『答えのない道徳の問題 どう解く?』(ポプラ社)を使った授業だ。続いて「好きじゃない贈り物をもらった。『嬉(うれ)しい』と嘘をついたら友達は喜んでいた」との逸話を紹介すると皆黙り込んだ▼ついていい嘘と悪い嘘に気付くと挙手は逆転。違いを話し合うと「罪を逃れたり、相手を傷つける嘘はだめ」「相手が喜ぶなら」と多様な意見が相次ぐ。正解はない。自分で考えることが『どう解く?』のミソだ▼年35回の道徳だが子供達は「嘘は悪い」から解き放たれ、「なぜ?」を導き出す哲学を学ぶ。そんな授業にホッとする半面、ふと8年弱に及んだ安倍前政権を巡る“嘘”が子供達にどう映ったのか気に掛かる▼「モリカケ」に続く「桜の前夜祭」は不起訴で決着。道義的責任は謝罪したが、文書の改竄(かいざん)に破棄、官の歪(ゆが)みを生んだ強行人事と忖度(そんたく)、118回に上る“虚偽答弁”と一強の威を借りた権力の私物化が目に余った▼小学の頃、先生から「自分につく嘘が最も悪い」と教わった。指導者が国のためと自らを騙(だま)す“善意の嘘”こそ最悪の嘘とか。哲学者カントの言葉だ。子供達は経験と学習を重ねて嗅ぎ分け、逞(たくま)しくしなやかに育っているようだ。