時評(12月20日)

八戸港の不漁が年々深刻さを増している。八戸市水産事務所の最新のまとめによると、2020年の水揚げは1月1日~12月10日で数量5万7204トン(前年同期比8%減)、金額123億4184万円(11%減)にとどまり、2年連続の6万9千トン、15.....
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 八戸港の不漁が年々深刻さを増している。八戸市水産事務所の最新のまとめによると、2020年の水揚げは1月1日~12月10日で数量5万7204トン(前年同期比8%減)、金額123億4184万円(11%減)にとどまり、2年連続の6万9千トン、150億円割れが濃厚。水産業界の危機感は強い。[br] 数量では、秋以降の主力を担う大中型巻き網船が伸び悩んだ。サバは本格化が昨年より早まり、1~11月で1万3398トン(6%増)。ただ、巻き返しが期待されたものの、群れの規模が薄く1隻当たりの漁獲もいまひとつで、全般的に大漁は長続きしなかった。12月中旬以降はしけが多く、見通しは不透明だ。[br] イワシは夏場の北海道東産が大半で、八戸近海は微々たるものだった。昨年はサバとイワシの混獲が目立ったが、関係者によると、今年は巻き網の割合が「サバ30対イワシ1」という。1~11月の数量は1万8486トン(27%減)で、特に11月の単月は11トン(前年同月比99%減)だけだった。[br] 水揚げのもう一つの柱である船凍イカは、1~11月でアカイカ6528トン(前年同期比9%減)、スルメイカ1198トン(39%増)。スルメイカは前年同期比でプラスだったものの、「昨年が悪過ぎた」(関係者)ため本来の姿には程遠い。日本海では9~10月、自国の排他的経済水域内で違法操業の中国船に締め出される事態もあった。[br] 不漁は沿岸漁業にも及ぶ。特に、サケの漁獲は海、川とも主力の太平洋側が昨年の約半分に落ち込み、毎年の放流事業への影響も懸念されている。[br] 海況の変化や資源量の多寡、国際問題など、魚種によって不振の背景は異なり、対策も一筋縄ではいかないだろう。加えて、今年は新型コロナウイルス感染拡大に伴う飲食店などの需要減で、浜値が抑えられるケースも見られた。数量、金額とも低迷しており、漁業関係者の苦悩は深まるばかりだ。[br] 今年は八戸みなと漁協の市場の卸売り業務撤退や中型イカ釣り船の廃業、水産加工業者の倒産といった、ハマの縮小を示すような出来事が相次いだ。漁業環境は厳しさを増している。漁業者と行政、研究機関は今まで以上に情報共有を図り「水産八戸」復活に取り組んでほしい。[br] 行政側の姿勢は、利用が低迷する市第3魚市場荷さばき施設A棟の対応に偏っている印象が否めない。しかし、課題は多岐にわたっている。現場の声にしっかり耳を傾け、漁業者に寄り添った施策を目指すべきだ。