【連載・青い森鉄道全線開業10年】(下)千葉社長インタビュー

「県南地方の沿線は可能性に満ちている」と語る千葉耕悦社長
「県南地方の沿線は可能性に満ちている」と語る千葉耕悦社長
通勤や通学の足として多くの人が利用する青い森鉄道。青森県の担当職員として2002年の先行開業から関わり、16年に社長に就任した千葉耕悦氏(65)から、全線開業後の10年間の出来事や新型コロナウイルスによる影響、経営の展望を聞いた。 ―4日で.....
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 通勤や通学の足として多くの人が利用する青い森鉄道。青森県の担当職員として2002年の先行開業から関わり、16年に社長に就任した千葉耕悦氏(65)から、全線開業後の10年間の出来事や新型コロナウイルスによる影響、経営の展望を聞いた。[br][br] ―4日で全線開業10周年を迎えた。[br] 02年の開業当初は採算性に問題があることから、新幹線が「光」、並行在来線は「影」だと言われた。JR時代以上に苦しい経営になると予想されたが、近年は利用者が増加し、少子高齢化の中で厳しいながらも経営は安定している。[br] 青い森鉄道の役割は大きく二つある。一つは通勤や通学の足であること。もう一つは、1日約50本もの貨物列車が通る物流ネットワークを支えていることだ。これは今後も変わることがないと思う。[br] 開業以来、会社の責任による運転事故はなく、無事故を継続している。利用者にとっては当たり前かもしれないが、将来にわたって続けていかなければならない。[br][br] ―この10年で最大の出来事は。[br] 全線開業から約3カ月後に発生した東日本大震災だ。野内駅(青森市)開業の前日に発生し、「まさにこれから」というタイミングで運休を余儀なくされた。[br] その際、驚かされたのは職員たちの頑張りだ。「1分でも早く運転を再開したい」との思いで、121・9キロの線路と設備全てを徒歩で安全確認した。[br] 11年3月14日には一部区間で、同18日には全線で運転を再開できた。鉄道職員の意地と誇りを目の当たりにした印象深い出来事だった。[br][br] ―新型コロナの影響は。[br] 19年度上半期は前年度を上回る実績を出せたが、10月の台風19号と消費税増税で潮目が変わった。それに年明けから本格化したコロナが追い打ちをかけた。県から線路使用料の減免を受けない実質黒字を、3年連続で達成することがかなわなかった。[br] 国から運行継続の要請を受けていることもあり、運休や減便をせずに力をふりしぼっているのが現状だ。安心して利用してもらうため、職員一丸となって車両内や券売機などの不特定多数の人が触れる場所を消毒している。抗ウイルス効果が長持ちするコーティング加工を12月中に実施する予定だ。[br][br] ―今後の展望は。[br] 路線は多くが県南地方を通っており、沿線との連携をさらに深めたい。[br] 小川原湖は若い人が楽しむカヤックやウインドサーフィンなどのアクティビティが盛んで、集客の目玉にできそうだ。プロスポーツのヴァンラーレ八戸や東北フリーブレイズと連携し、試合が行われる八戸市に乗客を運ぶ「スポーツ観戦切符」のような企画も実現できないかと考えている。[br] 県南は大きな可能性に満ちている。安全第一として、地域住民に信頼され、ともに歩む「わ」の鉄道として頑張っていきたい。「県南地方の沿線は可能性に満ちている」と語る千葉耕悦社長