【解説・中間貯蔵施設共用案】事業者の都合優先、苦肉の策

電気事業連合会が検討していることが明らかになった、使用済み核燃料中間貯蔵施設(むつ市)の共用案には、福井県から核燃料の県外搬出を求められている関西電力を助ける―という狙いが透けて見える。ただ、そもそも福井県が「県外搬出」を訴えた背景にあるの.....
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 電気事業連合会が検討していることが明らかになった、使用済み核燃料中間貯蔵施設(むつ市)の共用案には、福井県から核燃料の県外搬出を求められている関西電力を助ける―という狙いが透けて見える。ただ、そもそも福井県が「県外搬出」を訴えた背景にあるのは、原発立地地域の負担を電力消費が多い都市部をはじめとする国全体で負うべき―との考えだ。共用案は、原子力施設が立地する県同士での負担の押し付け合いにつながりかねず、事業者の都合を優先した苦肉の策と言える。[br][br] 福井県によると、県外搬出を最初に訴えたのは栗田幸雄元知事。栗田氏は1996年の原子力政策円卓会議で「発電所敷地内での使用済み燃料の貯蔵が長期化し、保管のあり方が明確でない。こういったバックエンド対策は原子力エネルギーを等しく享受する国民全体の問題として取り組むべきだ」と発言した。[br][br] もとより敷地外の中間貯蔵施設が必要になったのは、六ケ所村の再処理工場の操業遅れや高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)のトラブルで、使用済み燃料の行き場がなくなり、原発の貯蔵プールが満杯に近づいていたためだ。[br][br] ただ、現在は各原発で敷地内での乾式貯蔵施設建設や、プールの貯蔵方法変更による容量拡大が進んでいる。解決策がほかに存在する以上、プールの容量不足は、むつ搬入の大義名分とはなり得ない。[br][br] 福井県の県外搬出を求める姿勢は後任2代の知事にも引き継がれたが、その対応は関電が解決するべき問題だ。核燃料サイクル全体の問題―などと本質をすり替え、遠く離れた青森県民に負担を強いるようなことがあってはならない。[br][br] 報道を受け、青森県とむつ市は電事連などからの打診を否定した。三村申吾知事と宮下宗一郎市長には毅然(きぜん)とした対応を求めたい。