天鐘(12月9日)

過去に使った手帳やスケジュール表などがなかなか捨てられずにいる。特に意識して保管しているわけではない。何かの拍子に引き出しからひょっこり出てきて驚くときがある▼個人情報もあるから、むやみにごみ箱へとはいかない。それより、そこに記した取材予定.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 過去に使った手帳やスケジュール表などがなかなか捨てられずにいる。特に意識して保管しているわけではない。何かの拍子に引き出しからひょっこり出てきて驚くときがある▼個人情報もあるから、むやみにごみ箱へとはいかない。それより、そこに記した取材予定や人との約束が当時を懐かしく思い出させる。さまざまな昔の記録は、自分にとっては日記のようなものだ▼ふと今年の手帳を開いてみた。振り返れば、いつもの年に比べて予定の欄に空白が多い。恒例の会合が減り、飲み会も見当たらない。恐らく、多くの方々も同様だろう。憎きコロナが消し去ってしまったスケジュールである▼卒業式、入学式、スポーツ大会、文化祭…。生徒手帳に二本線を引き、涙した人もいたに違いない。旅のキャンセル、宴(うたげ)の中止…。数々の無念をまとって、今年の一冊は間もなくその役目を終える▼つらいことが多かった2020年も残すところ3週間。書店の一角では来年の手帳やカレンダー、日記のコーナーが幅を利かしている。手に取りパラパラとめくれば、真っ白な365日が静かに「ご主人さま」を待っている▼改まる日記や手帳のリセット感には心も洗われる。気の毒だった今年の相棒の労をねぎらいつつ、既に新たな一冊を手にした方もおられよう。来年こそは、空白の多くを希望で埋めたい。〈日記買ふ白き頁に夢のせて〉大橋伊佐子。