青い森鉄道全線開業10年 地域の足と物流支え 

全線開業10周年を迎えた今も通勤や通学の足として沿線住民に親しまれている青い森鉄道=1日、青森駅
全線開業10周年を迎えた今も通勤や通学の足として沿線住民に親しまれている青い森鉄道=1日、青森駅
東北新幹線の整備でJR東日本から経営が分離された青い森鉄道(千葉耕悦社長)は、全線121・9キロが開業して4日で10年となった。生活と物流を支え、沿線住民に親しまれている地方の鉄道は、観光にも注力。インバウンド(訪日外国人客)効果も手伝って.....
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 東北新幹線の整備でJR東日本から経営が分離された青い森鉄道(千葉耕悦社長)は、全線121・9キロが開業して4日で10年となった。生活と物流を支え、沿線住民に親しまれている地方の鉄道は、観光にも注力。インバウンド(訪日外国人客)効果も手伝って、近年の収支は着実に改善していた。コロナ禍に見舞われ、再び経営が厳しさを増す中、ローカル線としてのさらなる魅力づくりが求められている。[br][br] 青い森鉄道は、線路や駅などの設備を青森県が所有し、車両を持つ会社側が運行を担う「上下分離方式」を取る。2002年に目時―八戸(25・9キロ)が先行開業し、10年12月に青森駅までの全線が開業した。[br][br] 収入の柱は、定期券を購入し通学や通勤で利用する層で利用者全体の約65%を占める。残りは買い物や通院、旅行者などの定期外の層で、比率は全線開業以来大きく変わっていない。[br][br] 収支を見ると11~16年は県から線路使用料の減免を受けることで黒字を確保。青森市内の県立高校近隣に野内駅、筒井駅の2駅を新設したことで通学利用者が増え、収益を押し上げた。[br][br] 観光や買い物、通院などで鉄道を使う定期外の利用者を呼び込む企画切符の販売にも力を入れる。沿線にある県営浅虫水族館(青森市)の入館料と乗車券をセットにした商品や、休日に1日乗り放題となる「青い森ワンデーパス」など、多種多様な商品を展開し、旅客運輸収入を下支えする。[br][br] 16年3月には、JRの寝台特急「カシオペア」の廃止で線路使用料収入がなくなり、赤字転落の危機を迎えたが、国の支援で新たに請け負った貨物列車の機関車交換業務で収入を底上げされた。17、18年度は減免を受けない「実質黒字」を達成した。[br][br] 軌道に乗り始めた経営を新型コロナウイルスが直撃した。インバウンドはほぼなくなり、20年度上半期(4~9月)の旅客運輸収入は前年同期の半分以下に落ち込んだ。国や県の観光支援事業の効果で回復傾向は見られるが、本年度の実質黒字達成は難しい状況だ。[br][br] 青い森鉄道の最大の株主である県も路線の先行きを懸念する。県の美濃谷邦康青い森鉄道専門監は「利用客の人数は持ち直しが見られるが状況は厳しい。線路使用料の減免も念頭に、支援策を考えたい」と話す。[br][br] 千葉社長は「地域の足と物流を支える役割はこれからも変わらない。人口減少による利用者減は懸念しているが、地域になくてはならない鉄道として努力したい」と話している。全線開業10周年を迎えた今も通勤や通学の足として沿線住民に親しまれている青い森鉄道=1日、青森駅