天鐘(11月22日)

「隣の車が小さく見えます」というCMがはやったのは昭和40年代のこと。日産のサニーがライバル・トヨタのカローラより排気量を100cc増やして売り出したのをPRした▼この頃、車メーカーの販売合戦が熱かった。高度成長に乗ってやってきたマイカーブ.....
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 「隣の車が小さく見えます」というCMがはやったのは昭和40年代のこと。日産のサニーがライバル・トヨタのカローラより排気量を100cc増やして売り出したのをPRした▼この頃、車メーカーの販売合戦が熱かった。高度成長に乗ってやってきたマイカーブーム。小さな車に手が届けば、次は少し大きく、より豪華なタイプが欲しくなる。車のグレードアップは当時の「豊かさ」の象徴だった▼「いつかはクラウン」。1983年のコピーは車好きの心を撃ち抜いた。あこがれの高級セダンはもう夢ではない。今日を頑張れば必ず明るい未来がやってくる―誰もがそう信じられた時代だった▼クラウンは“記号”を持った車だと、自動車評論家の徳大寺有恒さんが書いている。〈大会社なら部長以上、公務員なら局長以上のステイタス〉。グリルで輝く王冠のマークは、揺るぎなき“車の頂点”の象徴でもあった▼その名車のセダンが近く姿を消すらしい。多目的車やミニバンの人気に押され、セダンの需要は芳しくない。伝統の車名は残しつつ、新たなスタイルに変わるそうだ。一つの時代の終焉しゅうえんを思う▼ハンドルを握り、アクセルを踏む。車を操る本来の醍醐味(だいごみ)も時代の価値観と共に変化していくのだろう。いまや自動運転が進み、将来は全てが電気自動車に移行しそうな気配。この先、「いつかは…」と、心ときめく車は現れるだろうか。