時評(11月20日)

最高裁大法廷は「1票の格差」が最大3・00倍だった昨年7月の参院選について「違憲状態とは言えない」と判断した。「立法府の是正を指向する姿勢が失われたと断ずることはできない」ことが合憲の根拠にしている。しかし、十分な是正はなされておらず、今回.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 最高裁大法廷は「1票の格差」が最大3・00倍だった昨年7月の参院選について「違憲状態とは言えない」と判断した。「立法府の是正を指向する姿勢が失われたと断ずることはできない」ことが合憲の根拠にしている。しかし、十分な是正はなされておらず、今回、かろうじて違憲判断を免れたにすぎない。[br] 1票の格差訴訟の最高裁判決は1964年が最初だ。この時は62年の参院選で最大4・09倍あった格差を合憲と判断した。[br] その後、参院選をめぐっては5倍以上の格差があった場合でも合憲判決が続き、6・59倍だった92年の選挙で初めて「違憲状態」の判断が示されている。[br] 参院選は都道府県を選挙区の単位としており、人口の少ない県の住民の代表を出すためには5倍の格差があっても容認すべきだという考え方であった。しかし、6倍を超えるとさすがに「不平等すぎる」と判断された経緯がある。[br] 投票の価値は本来、どこに住んでいても同じであるべきだ。しかし、都市と過疎地では人口密度が違い、まったく同じというわけにはいかない。[br] どの程度なら1票の価値の格差が認められるのか。衆院選では最高裁判決で2009年の2・30倍、12年の2・43倍、14年の2・13倍が違憲状態とされている。[br] 参院選の改革では15年の改正公選法で「鳥取・島根」「徳島・高知」の合区を導入した。付則で「19年参院選に向けて選挙制度の抜本的な見直しについて必ず結論を得る」とされた。[br] 16年の参院選では最大格差が3・08倍まで下がった。しかし、18年の改正では定数を6増としただけで終わり、付則は無視される形になった。[br] 今回の訴訟で最高裁に上告される前の高裁段階で出された16件の判決は、合憲が14件、違憲状態が2件だった。[br] その一つの高松高裁は昨年10月、「3倍という投票価値の格差は常識的に考えても許容しがたい」と判断した。定数6増の改正には「最大格差を3倍未満にするための弥縫(びほう)策」とまで指摘している。[br] この点、最高裁大法廷は「合区を維持し、わずかだが格差を是正している」と一応、評価した。だが「わずか」と形容したことは、国会が十分な働きをしていないと見ている証左だろう。[br] 15人の最高裁判事のうち3人は違憲、1人が違憲状態の意見だった。このまま抜本的な改革がなければ、将来の訴訟では合憲判断が維持されるとは考えにくい。