【無形文化遺産】次世代継承へ決意新た/二戸の保存団体

漆搔き技術の継承に向け、人材育成の重要性を強調する工藤竹夫会長=11月中旬
漆搔き技術の継承に向け、人材育成の重要性を強調する工藤竹夫会長=11月中旬
二戸市の漆搔き技術が「伝統建築工匠の技」として、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録される見通しとなった。漆の生産量日本一を誇る同市で、漆搔き技術の継承や人材育成を担ってきた「日本うるし掻き技術保存会」。メンバーらは「先人か.....
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 二戸市の漆搔き技術が「伝統建築工匠の技」として、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録される見通しとなった。漆の生産量日本一を誇る同市で、漆搔き技術の継承や人材育成を担ってきた「日本うるし掻き技術保存会」。メンバーらは「先人から受け継いだ技術が認められてうれしい」と正式登録を心待ちにしつつ、次世代へつなぐ決意を新たにしている。[br][br] 同保存会の会長を務める工藤竹夫さん(79)は、漆搔き歴約65年の大ベテラン。中学卒業後、15歳で父に弟子入りして以来、技術の伝承、人材育成に汗を流してきた。「先輩から受け継いできた技術が認められることは、全国の職人の励みになると思う。一日も早く登録されれば」と期待を込める。[br][br] 国産漆の約7割を生産する二戸市。品質が高く、浄法寺地区で多く採取されることから「浄法寺漆」と呼ばれる。一方、安価な外国産に押されて在庫を抱える時期もあり、漆搔き職人は減少。ピーク時には岩手県北、青森県南両地方で300人以上いたとも言われるが、現在は38人だ。[br][br] 漆搔き技術の継承と生産量確保に向け、1996年に同保存会が発足。全国から研修生を受け入れ、樹液の採取のほか、道具作りなど漆搔きに必要な技術を教えている。[br][br] 外国産に押されて低迷していた浄法寺漆が一躍脚光を浴びるきっかけになったのが、国の方針転換だ。2015年に文化庁が国宝などの文化財の修繕に、原則として国産漆を使用するよう全国に通知した。それ以来、同保存会では、職人の育成に一層力を入れて取り組んでいる。[br][br] 工藤会長によると、漆は搔く人の技術によって全く質が異なるといい、「一人一人が技を磨かなければならない」と技術力向上の必要性を強調する。[br][br] 技術を受け継ぐ若手の職人たちも、今回のユネスコ登録への動きを認知度アップの好機と捉えている。国産漆が足りない現状を知り、漆搔き職人を目指して5年前に同市に移住してきた、同会の長島まどかさん(32)は「技術が認められることは誇らしい」と喜ぶ一方、漆搔きが全国的にはあまり知られていない現状を挙げ、「ユネスコに登録されて、漆搔きのことをもっと広く知ってもらえたら」と願う。[br][br] 現在、浄法寺漆の多くが、世界遺産の日光東照宮(栃木県日光市)などの文化財修復に使われており、今後も国内での需要が続く見通し。長島さんは「安定した品質の漆を採り、周りから頼られる職人になりたい」と力を込める。漆搔き技術の継承に向け、人材育成の重要性を強調する工藤竹夫会長=11月中旬