“幻のソバ”復活 そば居酒屋「きんじ」12月12日閉店 コロナで客足減響く

「良いお客さまに恵まれた」と話す店主の昆清美さん=4日、二戸市
「良いお客さまに恵まれた」と話す店主の昆清美さん=4日、二戸市
二戸市の二戸駅前にあるそば居酒屋「きんじ」が12月12日、閉店する。新型コロナウイルスの影響で客足が減り、開店24年目で苦渋の決断をした。名物は在来種から育成した「岩手中生(なかて)」を使ったそば。栽培農家は少なく、同店でしか味わえない一品.....
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 二戸市の二戸駅前にあるそば居酒屋「きんじ」が12月12日、閉店する。新型コロナウイルスの影響で客足が減り、開店24年目で苦渋の決断をした。名物は在来種から育成した「岩手中生(なかて)」を使ったそば。栽培農家は少なく、同店でしか味わえない一品として多くの人に愛された。店主の昆清美さん(63)は「開店以来あっという間で楽しかった。良いお客さまに恵まれた」と感謝の思いを強くする。[br][br] 夫の故・俊顕さんと共に1996年3月に開店。当時の岩手県職員から二戸の在来ソバ品種があることを教わり、わずか400グラム残っていた種を取り寄せて地元農家に育成してもらった。[br][br] 岩手中生は品種改良がされておらず、収穫量は気候に左右される。栽培は長く途絶えていたものの、俊顕さんらが農家と協力して7年かけて生産量を徐々に増やし、約20年前に“幻のソバ”を復活させた。風味豊かで希少なソバは地元のみならず、県内外のファンに愛された。[br][br] 俊顕さんが2016年に病気で亡くなった後は、清美さんと息子の圭輔さん(32)が店を切り盛り。だが、新型コロナウイルスの感染拡大により客足は急激に減り、4、5月は営業時間を短縮。入居するビルは市の区画整理事業の対象になっており、移転も考えたが大幅な収入減が響いた。[br][br] 一方、岩手中生の生産者は現在市内に1人。高齢なこともあって今年は栽培しておらず、二戸在来種は再び途絶えてしまいそうだ。[br][br] 清美さんは「コロナが今年で収束すると分かっていれば良いが、どのくらい続くか分からない」と、先を見通せない状況を憂う。[br][br] 同店は月1回の例会でそば打ちなどを楽しむ「二戸御法度の会」(佐藤和夫会長)の活動拠点でもあった。[br][br] 毎月約40人が集まってそば打ちを楽しんでいたが、春先から開催できていない。佐藤会長は「いくらでも力になりたかったが、コロナで多くの人を集めることができず残念。ただ、一度途絶えたソバを復活させて味わえたのは良かった」と振り返る。[br][br] 閉店まであと1カ月。清美さんは「良いお客さんに巡り会えて楽しい時間だった」と笑みを浮かべる。つらい決断だが、残された日をいつもと変わらずお客さんと向き合う。「良いお客さまに恵まれた」と話す店主の昆清美さん=4日、二戸市