【超高齢社会の先へ】第4部 社会からの孤立(1)

孤独死があった現場で清掃をする特殊清掃員。ごみがあふれている現場も多い(提供写真) 
孤独死があった現場で清掃をする特殊清掃員。ごみがあふれている現場も多い(提供写真) 
少子高齢化が進行するにつれて高齢者の単身世帯が増えてきている。内閣府の「2019年度高齢社会白書」によると、65歳以上の高齢者のうち、3割近くが一人暮らしをしている現状が明らかになった。悠々自適な生活を送れる半面、病気や認知症の進行、詐欺な.....
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 少子高齢化が進行するにつれて高齢者の単身世帯が増えてきている。内閣府の「2019年度高齢社会白書」によると、65歳以上の高齢者のうち、3割近くが一人暮らしをしている現状が明らかになった。悠々自適な生活を送れる半面、病気や認知症の進行、詐欺などのトラブル、孤独死のリスクもつきまとう。高齢者の単身世帯が増え続ける今、どのような対策が求められているのか。第4部では「超高齢社会における孤立」をテーマに、現状を取材し、課題と解決への手がかりを探る。[br]    ◇   ◇[br] 高齢者の単身世帯の増加に伴い、さらなる増加が懸念されている孤独死。死臭と共に、助けも呼べず誰にみとられることもなく死を迎えたむなしさが部屋全体に染みついている。「例えるなら甘ったるく鼻につく臭い」。特殊清掃員として、孤独死があった部屋の清掃や消毒作業を専門に請け負う八戸市の「ふうせんの風」本部長の芋田健二さんは現場の状況を語る。[br][br] 孤独死は遺体の腐乱による異臭で気付かれることが多く、死後の部屋の状況によるが、夏場は2~3日、冬場は1週間程度で死臭が漂いはじめ、3日目くらいからは体液が流出し、虫が集まってくるという。[br][br] 特殊清掃の現場は、おおむね死後1週間以上経過しているため、感染症のリスクも考慮し、防護服を着用して薬剤を散布するなどの対応が必要になる。「どんな状況でも、現場を大事に扱うように心掛けている」と芋田さん。現場に入る時は必ず最初に手を合わせて故人を悼んでから作業に着手する。初めに二酸化塩素調整水で消毒し、体液をゼリー状に固める薬品を散布。その後は部屋に散らかったごみの片付けや、死臭が染みついた壁紙、エアコン、体液で傷んだ床材を取り外すまでが主な作業だ。[br][br]   ◇   ◇[br] ふうせんの風には、八戸市をはじめ東北地方や、関東地方を含めて年間80件ほどの依頼が舞い込んでくる。特殊清掃事業を始めた7年前と比較しても依頼数は格段に増えているといい、芋田さんは「単身世帯の増加に加え、特殊清掃の認知度が高まってきている」と分析する。[br][br] 一人一人の人生がそれぞれ違うように、孤独死の現場も一つとして同じ現場はない。風呂場で湯船に漬かったまま一部原型をとどめない遺体があった現場、病死した80代男性の遺体が1カ月以上放置され腐乱が進んだ現場、飢えた飼い猫だけが残された現場―。「どんなにいろんな現場を見てきたとはいえ、視覚と嗅覚はやられますね」。決して目をそらしてはならない現実がそこにはある。[br][br]   ◇    ◇[br] 状況はさまざまだが、たいていは「ごみ屋敷化」している。特に高齢者の孤独死の現場では遺品として残せるものが少ない上に家族や親戚と疎遠のため、遺品の引き取り手がないという特徴がある。死後もなお、顧みられることのない孤独感が漂う現場。芋田さんは「悲しさやむなしさはあるが、自分たちにしかできない仕事だという使命感や誇りもある。依頼主に感謝してもらえることが励み」と実感を込める。[br][br]   ◇   ◇[br] 「孤独死」は定義が難しく全国的な統計はないものの、今後も増加が懸念されているにも関わらず、特殊清掃を扱う業者が少ないのが現状だ。「孤独死の現場はこれからも必ず出てくる。孤独死をなくする対策も大事だが、孤独死の『その後』の対応も考えていかなければならない。今こそしっかりと向き合うタイミングだ」と芋田さん。特殊清掃業界が行政や民生委員といったさまざまな機関と連携し、ネットワークを構築していくことの必要性を訴える。[br]※「ふうせんの風」への問い合わせは電話=0120(030)477=へ。孤独死があった現場で清掃をする特殊清掃員。ごみがあふれている現場も多い(提供写真)