新型コロナウイルスの累計感染者は国内で10万人を超え、この2カ月半で倍増した。新規感染者は北海道や大阪、首都圏などで増えており、警戒水域に入った。検査を拡充して流行を早く察知し、都道府県知事らが必要に応じて行動自粛を人々に促す段階を迎えた。[br] 世界では新規感染者が連日のように、最多を更新中だ。特に欧米で急増し、最後の手段である都市封鎖も広がる。こうした感染爆発はぜひ防がねばならない。各国の経験も学び、場当たり的でない明確な基本戦略を示すよう政府に求めたい。[br] 新型コロナは無症状や軽症が多く、捉えにくい。確認される感染者数は依然氷山の一角だ。しかもいつまでも消えず、流行をしつこく繰り返す。人類が向き合った病原体の中でもかなり厄介な存在だが、世界で4600万人以上が感染し、特徴は次第に分かってきた。[br] 感染者のうち、人にうつすのは2割にすぎず、密閉、密集、密接の「3密」や大声の会話で広がりやすい。日本の専門家が流行初期に見つけた重要な事柄だ。この知見に基づき、クラスター(感染者集団)に着目した感染連鎖の遮断は効いた。人口当たりの感染者、死者ともに日本が欧米の数十分の1にとどまるのはこの対策の結果といえる。[br] 春の第1波、夏の第2波に続き、冬に第3波が日本にも来る可能性は大きい。ただ、患者の治療は現場が習熟して改善し、感染者の増加に反比例して重症化と死亡の比率は低下してきた。厚生労働省によると、感染者の死亡率は60代以上で5・7%となお高いものの、50代以下で0・06%になっている。[br] 日本の死者は約1800人。重大な新興感染症だが、国内の死者数で比べると、結核並みで、毎年のインフルエンザより少ない。流行規模を欧米より格段に抑えられれば、医療を崩壊させずに社会生活は維持できる。[br] 感染爆発を回避できれば、クラスター対策は今後も役立つ。急増する場合、外出自粛や飲食店の営業時間短縮の再要請はあり得る。この感染症は人口密度の高い都市で流行しやすい。一律の緊急事態宣言より、地域ごとにきめ細かい対策が望ましい。[br] 経済活動は感染を広げかねないので、予防との両立にはジレンマが伴う。スポーツ大会などは再開されつつあるが、年末年始の人出の抑制は必要だろう。「経済か命か」と問うのは不毛な議論だ。当面は医療を充実させながら感染拡大の機会を極力減らし、予防に重点を置いて制御すべきだ。