時評(10月26日)

下北地域の冷涼な気候を生かした「下北夏秋いちご」。2004年に栽培が始まってから20~30代の新規就農者が増加。作付面積も右肩上がりで、下北で最も勢いのある作物だ。 下北夏秋いちごは、出荷組合長を務める村田睦夫さん(60)=東通村=が産地化.....
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 下北地域の冷涼な気候を生かした「下北夏秋いちご」。2004年に栽培が始まってから20~30代の新規就農者が増加。作付面積も右肩上がりで、下北で最も勢いのある作物だ。[br][br] 下北夏秋いちごは、出荷組合長を務める村田睦夫さん(60)=東通村=が産地化に取り組んだ。05年に生産者2戸、作付面積22アールだったが、新規就農者の受け入れ推進もあり、19年には19戸、313アールに拡大。750万円だった販売額は、18年に過去最高となる9600万円に。19年は苗の納入遅れで前年を下回る8400万円にとどまったが、施設園芸作物として下北初の1億円到達を視野に入れる。[br][br] 魅力は安定した収入だ。他の作物と比べて価格変動が少なく、16アールに5棟のビニールハウスを構える平均的な生産者で500万~700万円の売り上げが見込める。初期投資も最低限としてハウスがあればよく、参入のハードルを低くしている。[br][br] 栽培管理も省力化されている。収穫は手作業となるが、施肥と水やり、ハウスの換気による温度管理は自動化。農業のイメージで抱かれがちな重労働とは真逆だ。12月から翌年3月まではオフシーズンで、余暇を思い思いに楽しめる。こうしたワークライフバランスの確立も若い人に支持される一因だろう。[br][br] 今後の課題は規格外品の取り扱いだ。新規就農者が増えると、生産量に比例して生じる。一方、新たな販路開拓も安定供給に応える必要があり、容易ではない。行政などと一体となり、より良い形を見つけたい。[br][br] 今年は新型コロナウイルス感染拡大に伴う飲食店の営業自粛や休業もあり、とりわけ販路の確保が求められた。減収分を補うため生産者3人が新たに始めたイチゴ狩りは、ヒントになるのではないか。高く売れる時期は難しいが、実施時期を再考して来年も継続させたい。規格外品を活用したシロップやワインの販売も始まった。これまでと異なる業種との取引に期待が持てる。[br][br] 夏秋いちごの収益性に着目し、他県でも栽培の動きが出ている。ただ、下北の強みは偏東風「やませ」による夏場の冷涼な気候。他の作物にとっては凶作をもたらす冷たく湿った風は厄介な存在だが、夏秋いちごには追い風。他県では栽培に冷房を使う事例もあるようで、環境は下北が優位にある。[br][br] 国内産が品薄になる6~11月は今も多くを輸入に頼る状況にある。まだまだ将来性がある作物と言えよう。産地としてさらなる発展を期待したい。