秋篠宮さまが皇位継承1位の皇嗣になったことを示す「立皇嗣の礼」が11月8日に開催される。終了後、政府は皇位継承策の本格的な検討に着手するが、女性・女系天皇容認論とこれまで通りの男系維持論の対立の溝は深く、議論は難航しそうだ。基本となるのは天皇制の在り方を巡る国民の総意である。[br][br] 皇室典範第1条は「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と定めている。現在、皇位継承資格者は皇嗣秋篠宮さま(54)と長男悠仁さま(14)、上皇さまの弟、常陸宮さま(84)の3人しかいない。[br][br] 天皇陛下の子どもは長女愛子さま(18)だけである。皇室にはほかに未婚の女性が5人いる。結婚すれば、いずれも皇室を離れる。現在のままでは次世代に限れば、悠仁さましか皇位継承者がいない、危機的な状況と言える。[br][br] 悠仁さまが生まれる前の2005年、政府の「皇室典範に関する有識者会議」は「女性・女系天皇への道を開くことが不可欠だ」と報告。小泉政権は翌06年、皇室典範の改正を目指したが、男系継承を主張する保守派の反対で断念した経緯がある。[br][br] 反対派は「126代続く歴代天皇は全て男系であり、皇室の伝統だ」と主張する。[br][br] 共同通信が4月に実施した世論調査では85%が女性天皇に賛成、女系天皇にも79%が賛成の意思を示した。ほかの調査でも女性・女系天皇の容認が多数となっている。憲法で天皇の地位は「国民の総意に基づく」と規定されているが、この世論が「国民の総意」と言えるのかが問題となる。世論は短い時間で変わることもある。[br][br] 皇位継承を考えるもう一つのポイントは天皇の在り方だ。16年、退位の意思を表明したビデオメッセージで上皇さまは「何よりもまず国民の安寧と幸せを祈る」「時として、人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添う」ことを天皇の務めだと語っていた。[br][br] 戦前の「統治権を総攬(そうらん)する」君主から戦後の「象徴天皇」に変わり、「天皇の望ましい在り方を日々模索しつつ過ごしてきた」上皇さまの結論であった。皇室が国民に広く受け入れられている理由でもある。[br][br] この「務め」にふさわしいのは男系に限られるのか。女性・女系天皇では無理なのか。検討すべき項目である。伝統も時代の要請を取り入れなければ継続できない。国民の総意を見極めるべく十分時間をかけ、議論を尽くすべき課題である。