亡き父思い、戦争の記憶つなぐ 三戸の遺族会・竹林さん、三戸と南部町の寺に本寄贈

龍川寺で寄贈する本を持つ竹林愛子さん。後ろには父武男さんら戦没者の位牌が並ぶ=15日、三戸町
龍川寺で寄贈する本を持つ竹林愛子さん。後ろには父武男さんら戦没者の位牌が並ぶ=15日、三戸町
三戸町の戦没者遺族会で女性部長を長年務めた竹林愛子さん(78)が今月、戦没者を祭る三戸、南部両町の九つの寺に一冊の本を寄贈した。青森県遺族連合会が2002年に刊行し、今年再出版した『遺族とともに五十三年』。00年まで約20年間、県連合会長を.....
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三戸町の戦没者遺族会で女性部長を長年務めた竹林愛子さん(78)が今月、戦没者を祭る三戸、南部両町の九つの寺に一冊の本を寄贈した。青森県遺族連合会が2002年に刊行し、今年再出版した『遺族とともに五十三年』。00年まで約20年間、県連合会長を務めた故藤田美栄さんが、県内遺族の戦後の姿などをまとめたもので、亡父のために中国を訪れた竹林さんのエピソードも掲載されている。竹林さんは「戦後75年の節目に、戦没者の記憶と遺族の思いを残したい」と願いを込める。[br][br] 竹林さんの父武男さん(享年28)は1944年、中国で戦死した。42年に生まれ、まだ幼かった娘に父と触れ合った記憶はない。それでも「家族から父の話を聞き、思いが募った。満月の夜は『お父さんが空から見守ってくれている』と言われたものだ」と幼少期の思い出を懐かしむ。[br][br] 成人してからは、三戸町で農業や農産物販売に携わる傍ら、町遺族会で積極的に活動。99年には県連合会が企画した、中国への慰霊巡拝に藤田さんらと参加した。[br][br] 「父さん、三戸に帰ろう。明日は何の日か覚えていますか、三戸祭りの音頭上げです。…帰ろう父ちゃん」[br][br] 本の中には、中国で行われた慰霊祭で竹林さんが呼び掛ける様子が描かれている。「現地で思いがあふれて…。自分が三戸で育てたサクランボも供えた」と当時を振り返る。[br][br] 本は県内の遺族会に500部が配布されたほか、関係機関に配られただけで、入手が困難となっていた。一方、県連合会が有志から寄付金を受けたことをきっかけに、今年9月に増刷し、再び日の目を見た。[br][br] それを知った竹林さんは「終戦から75年がたち、戦没者や遺族の記憶が薄れている。この本で思いをつなぎたい」とすぐに10冊を購入。9冊を各寺に贈り、1冊は手元に残して同町川守田元木平で経営する農産物直売所で公開することとした。[br][br] 本は14、15の2日間で配り終えた。最終日には、武男さんを含む戦没者50人の位牌(いはい)が安置されている同町川守田中屋敷の龍川寺にも納められた。長岡孝博住職(50)は「世代が代わり、戦争経験者は90歳を超える状況だ。戦争と戦没者の記憶を残していきたい」と思いを受け止めた。[br][br] 竹林さんは「父さんも喜んでくれるかな」。その顔には満月のような優しい笑みが浮かんでいた。龍川寺で寄贈する本を持つ竹林愛子さん。後ろには父武男さんら戦没者の位牌が並ぶ=15日、三戸町