時評(9月23日)

今年も本格的な台風シーズンを迎える。秋台風は西日本から東日本に上陸、東北地方を縦貫して甚大な被害を及ぼす恐れがある。今年は特に日本の南の太平洋海域で海面水温が高く、気象庁は台風の勢力が強まると警告している。強い危機感を持って、できる限りの備.....
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 今年も本格的な台風シーズンを迎える。秋台風は西日本から東日本に上陸、東北地方を縦貫して甚大な被害を及ぼす恐れがある。今年は特に日本の南の太平洋海域で海面水温が高く、気象庁は台風の勢力が強まると警告している。強い危機感を持って、できる限りの備えを急がなければならない。[br] 「特別警報級」と警戒された台風10号は6日から7日にかけて九州の西を北上し、土砂災害や冠水被害をもたらした。九州に近づく前に勢力がやや衰えて特別警報は出されなかった。だが、今後日本列島を襲う台風は強大な勢力を保ったまま上陸する可能性が高い、と考えた方がよいだろう。[br] 台風のエネルギー源は海から蒸発する水蒸気だ。気象庁は1日、日本の南の太平洋3海域で8月の海面水温が過去最高だったと発表した。海面水温が高いとそれだけ水蒸気量は多くなる。台風10号はこの発表の直後に北上したため、緊張感が高まった。10号の勢力がやや衰えたのは、直前に北上した9号が海水をかき混ぜて台風を発達させる水蒸気量を減らしたためとみられている。[br] 今夏は太平洋高気圧が強く、台風は九州の西を主な進路にしていた。しかし、これからこの高気圧が弱まると、台風は西日本から東日本を直撃する進路をとる可能性が高い。海面水温が高い傾向は続きそうで、台風の強大化は避けられそうにない。[br] 地球温暖化によって地球の表層に蓄積された熱の90%以上は海に蓄えられている。海面水温の上昇は主にこの海洋貯熱量の増加が原因だ。気温が産業革命前より2度上昇すると「100年に1度」級の国内での豪雨頻度が約2倍になるという試算もある。世界が温暖化防止対策を積極的に進めてもその効果が表れるのははるか先だ。人類は温暖化による気候変動の現実を受け止めなければならない。[br] 政府は「国土強靱(きょうじん)化」政策を進めているが動きは鈍い。堤防の増強などの治水対策には時間がかかる。政府や自治体、関係機関は今できる対策を速やかに実行すべきだ。水害の激甚化により堤防やダムの施設能力に限界があることがはっきりした。これまでの避難の考え方も通用しなくなっている。ハザードマップの見直しは喫緊の課題だ。河川の氾濫域も含めた流域全体で洪水被害に備える「流域治水」を進める必要もある。[br] 国や自治体の責務は重いが、私たち自身も被害を最小限にするために身の回りの備えを急ぎたい。