天鐘(9月21日)

「六十の手習い」という諺(ことわざ)がある。新しい事を学び始めるのに年齢は関係なく、年を理由に諦めてはいけない。「思い立ったら“吉日”。さぁ、今から始めよう」との教えでもある▼わが国では江戸時代から60歳の還暦を「長寿」として祝ってきた。そ.....
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 「六十の手習い」という諺(ことわざ)がある。新しい事を学び始めるのに年齢は関係なく、年を理由に諦めてはいけない。「思い立ったら“吉日”。さぁ、今から始めよう」との教えでもある▼わが国では江戸時代から60歳の還暦を「長寿」として祝ってきた。その長寿目標を1947年には国民平均で追い抜き、今や平均寿命は男性81・41歳(世界3位)、女性87・45歳(同2位)と年々延びている▼「人生100年」はすぐそこに来ており、還暦で萎(しお)れていては先が長すぎる。今、100歳以上は7万人超。多くは長寿を目標にした訳ではなく「生きがいを見付け、日々の暮らしを楽しんできた結果」だという▼ゲーテは74歳で19歳の女性に求婚し断られた。81歳で『ファウスト』を書き終え、翌年に生涯を閉じた。彫刻家ミケランジェロは70過ぎでサン・ピエトロ大聖堂の改築を手掛け、亡くなる88歳まで彫り続けた▼画家モネは86歳、ピカソは91歳まで絵筆を執った。葛飾北斎は89歳で没する前年に大鳳凰(ほうおう)図を完成させた。蘭学医の杉田玄白が『蘭学事始(ことはじめ)』を脱稿したのは83歳。80代でより輝いた天才を挙げれば枚挙に暇(いとま)がない▼無論、早くから勤(いそ)しんできた世界が円熟したのだろう。加齢で記銘力や想起力など単純な能力は衰えるが、理解力や創造力など知的能力はある程度まで維持できるとか。ゲーテや北斎に負けていられない。今日、敬老の日から。