時評(9月19日)

延べ約1万人から計約2100億円を違法に集めたとみられる「ジャパンライフ」の元会長山口隆祥容疑者ら14人が詐欺の疑いで逮捕された。巨額被害を生んだ背景には安倍晋三前首相主催の「桜を見る会」の招待状が勧誘セミナーのチラシに印刷され、利用されて.....
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 延べ約1万人から計約2100億円を違法に集めたとみられる「ジャパンライフ」の元会長山口隆祥容疑者ら14人が詐欺の疑いで逮捕された。巨額被害を生んだ背景には安倍晋三前首相主催の「桜を見る会」の招待状が勧誘セミナーのチラシに印刷され、利用されていた事実がある。容疑者がどのように招待され、招待状がどう使われたか再調査すべきだ。[br] ジャパンライフは訪問販売で数百万円の磁気ネックレスやベストの購入を全国各地で勧誘。購入した商品を第三者に貸し出す形にして年約6%の配当を得られるとする「レンタルオーナー制度」という商売をしていた。販売預託商法といわれるやり方だったが、実際には磁気商品はほとんど存在せず、新規契約の代金を配当に回す自転車操業だったとみられる。[br] 預託商法では2011年に破綻、約4300億円の被害を出した安愚楽牧場の例があり、以前から詐欺まがいのやり方の問題が指摘されていた。消費者庁が来年にも法改正して原則禁止とする方針を示しているが、遅すぎたと言わざるを得ない。[br] 被害者はほぼ全国に及び、なぜ、これほど巨額の被害が出たのか。山口容疑者は捜査関係者の間で「マルチの帝王」と呼ばれ、マルチ商法の手法を変えながら業績を伸ばしていた。法律の隙を突くやり方であり、法の規制が後手に回ったことが原因の一つである。[br] さらに問題なのは政治を利用する商法で顧客をだましていたことだ。15年、各地で開かれた同社の勧誘セミナーで配られたチラシには「桜を見る会」の招待状が印刷されていた。[br] 集会で山口容疑者は「招待された」と話しており、招待状が勧誘の道具に使われていた。昨年、山口容疑者は安倍前首相の推薦枠で招待された疑惑が浮上、国会で追及されたが、招待者名簿が既に廃棄され、誰に招待されたか分からないままだ。[br] 山口容疑者は政治団体を通じて中曽根康弘元首相に多額の献金をし、近年は柿沢未途衆院議員側への献金も判明しており、政界とのパイプを誇示していた。元内閣府官房長や消費者庁元課長補佐らを顧問に迎え、05~17年度に6人に総額約1億6千万円の顧問料を払っていたことも明らかになっている。[br] 政界との癒着の象徴が「桜を見る会」の招待状である。誰が関与し、どのような経緯で招待を決めたのか。被害者数が多く、被害額も大きいこのような詐欺事件の再発を防止するためには政界の関わりの解明が必要だ。