天鐘(9月12日)

砂浜には不思議な力があるのかもしれない。それを目の前にすると、なぜか大人も子供も、遊び心がくすぐられる。木の枝で絵を描いたり、動物の形を作ってみたくなったりする▼ほほ笑ましく、たわいもない砂遊び。だが無邪気な砂との戯れも、所構わずというわけ.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 砂浜には不思議な力があるのかもしれない。それを目の前にすると、なぜか大人も子供も、遊び心がくすぐられる。木の枝で絵を描いたり、動物の形を作ってみたくなったりする▼ほほ笑ましく、たわいもない砂遊び。だが無邪気な砂との戯れも、所構わずというわけには当然いかない。観光地ともなればなおさらで、“巨大な砂場”の鳥取砂丘では、砂に描いた落書きが罪になる▼有名な「馬の背」の斜面などを足で削って、名前やメッセージを残す無粋な目立ちたがり屋が後を絶たないそうだ。雨風で消えるとはいえ、度を超せば景観が泣く。あまりにも大きな落書きにはちゃんと罰金が課せられる▼こちらは頰(ほお)が緩んだ話題である。鯵ケ沢町の海岸に現れた砂の「わさお」は、町商工会青年部による力作だ。春にあの世に旅立った町のアイドル。あの笑顔が戻ってきたと子供たちは大喜びだった▼今年はコロナで楽しいことがなかったから、と思い立つ。大人たちがせっせと砂を固めた。お金を掛けたわけではない。しばし童心に帰っての無心な砂遊びが、町民には心温まる夏の思い出になった▼愛の言葉を波が消していくのはパット・ブーンの『砂に書いたラブレター』。残念ながら、砂のわさおも先日の雨で天国へと帰ったようだ。集まれば人の心も癒やせる小さな砂粒の不思議な力。そんなことを思った、小さな町の、小さな話題である。