時評(9月10日)

新型コロナウイルス感染拡大の防止のため、在宅勤務や不要不急の外出自粛を余儀なくされている中で、家庭で消費する「巣ごもり需要」が個人消費を下支えしている。 総務省の7月の家計調査で見ると食事代、飲酒代、交通費、旅行代が前年同月比で約30~90.....
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 新型コロナウイルス感染拡大の防止のため、在宅勤務や不要不急の外出自粛を余儀なくされている中で、家庭で消費する「巣ごもり需要」が個人消費を下支えしている。[br] 総務省の7月の家計調査で見ると食事代、飲酒代、交通費、旅行代が前年同月比で約30~90%減少した一方で、パソコンやゲームソフト、チューハイなどが2倍超から約40%の増加だ。[br] 巣ごもり需要を当て込んだ新たなビジネスも登場している。 小売店舗向け需要が落ち込み、高級肉などの食材卸売業者による直接家庭向けの食材販売や、「お取り寄せグルメ」のネット販売も好調だ。[br] さらにタクシーによる弁当など飲食物の配送サービスが、都市部や地方で浸透してきている。国土交通省は、利用客減少で経営が悪化したタクシー業界の支援と、飲食店の出前需要に対応して、4月21日から、タクシーによる飲食物宅配を全国で認めた。[br] 当初は5月13日までの期限だったが、9月末まで延長している。参入済みのタクシー事業者は約1700社に上り、事業として定着してきており、同省は同事業を恒久化する方針だ。[br] ただ、サービスを充実させるための環境整備も必要だ。[br] トラック事業者との競合を避けるため、タクシーで配達できる品目を飲食品に限定することや、食中毒を防止するための車載用保冷・保温設備の購入費への補助金支給、タクシーが店舗から宅配を請け負う料金や顧客から徴収する利用料金の設定・整備などが必要だ。[br] コロナ下で人々は「3密」を避け、買い物に出かける、飲食店で食事するなどの行動にも慎重になっている。飲食品を宅配で楽しむという生活様式の広まりから、宅配タクシーへの消費者のニーズは多いだろう。[br] ただ、事業を一過性に終わらせることなく、コロナ禍が終息した後でもサービスが広がっていく仕組みが検討されなくてはならない。そのためには宅配タクシーによるサービスを、高齢化社会を見据えた様々なニーズに応える事業として展開させていくことだ。[br] 地方では顕著だが、都市部においても移動手段が限られている高齢者にとって、生活必需品の買い物に困る、いわゆる「買い物弱者」状態の解消が課題だ。地域の実情を把握している自治体などが音頭を取って、関連した業界が連携して宅配タクシーによるサービスの新たなビジネスモデルを構築することも、検討すべきではないだろうか。