新型コロナウイルスの感染拡大の影響で苦境に立たされる観光産業。立て直しや、振興に向けてどのような戦略を描くべきか。国内外でホテルや温泉旅館など45施設を運営する星野リゾート(長野県軽井沢町)の星野佳路代表(60)に聞いた。[br][br] ―観光産業の現状や新型コロナを受けての変化は。[br][br] 4、5月は自粛の影響もあり、需要の90%がなくなったが、夏休みごろには需要が戻ってきた。[br] 新型コロナを受け、消費者は「3密回避の旅」が大前提となっている。業界としては、これまで以上に安全対策や衛生管理、あらゆる3密対策を徹底し、不安要素を取り除く対応をしている。[br][br] ―提唱する「マイクロツーリズム」とは。[br][br] 1時間、2時間圏内の身近な場所に、団体ではない小さなグループで観光することだ。[br] 高速道路や新幹線の整備が進んだ過去20年間、多くの人が、より遠くへと旅行するようになっていた。進化が進んでいる各地域の地元観光地には、しばらく行っていないという人も多いだろう。この機会に地域を巡り、進化や魅力を再発見してもらいたい。[br] 強い観光地は、観光産業に従事している人だけでなく、周辺の住民が地元をよく知り、プライドを持っている。観光客は、街の人とも話をするし、風情を見て歩く。そのことで、街の良さを感じる。マイクロツーリズムで、自分の住む地域の良さを発見し、アピールしていくことが重要ではないか。[br] 一方、マイクロツーリズムは、一つの県だけの観光でないことを意識して取り組む必要がある。商圏や経済圏は県境をまたいで存在しており、マイクロツーリズムも県境をまたいだエリアで成立する。その意味で、仮に将来緊急事態宣言が発出される場合は、いかに商圏を維持していくかを考えることが大切だ。[br][br] ―ダメージを受けた観光産業。地方で立て直しに必要なことは。[br][br] やるべきことは二つある。一つは国内需要の掘り起こしだ。国内市場ではこれまで、団塊の世代に依存していた面がある。ただ、2025年以降は団塊の世代が後期高齢化し、国内の観光需要の落ち込みは避けられない。市場が縮小する中、ターゲットを若い世代にシフトする必要がある。ハワイや沖縄などに旅行している若い世代に、青森に行きたいと思ってもらえるよう取り組んでいかなければ、今後の変化には対応できない。[br] 二つ目は、必ず復活するインバウンドへの対応だ。直行便でつながる国だけを重視するのではなく、全世界を視野に戦略を立てることが重要だ。[br] この機会に、青森でも、インバウンドの将来像を描き直すべきだろう。直行便でつながる国だけを重視するのは、その国の政治や経済の情勢に左右されるためリスクがある。[br] 例えば下北地方に生息し、雪の中で暮らすサルは世界的にも非常に珍しく、「見たい」資源だ。青森の素材のポテンシャルは世界をターゲットにできる。インバウンドの再開に向け、全世界から来てもらえるようなマーケティング活動が必要になる。[br](※オンラインによるリモート取材を実施)