風間浦村の2公衆浴場が11月閉館/常連客「寂しい」惜しむ声

11月末で閉館する大湯=7月、風間浦村下風呂
11月末で閉館する大湯=7月、風間浦村下風呂
風間浦村の下風呂温泉郷にある公衆浴場「大湯」と「新湯」が11月末で閉館する。村が12月1日の開業を目指して建設を進める村営新浴舎に源泉の湯が回され、営業できなくなるためだ。昭和時代の建築物として風情を残すが、老朽化が著しく、将来的には建物自.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 風間浦村の下風呂温泉郷にある公衆浴場「大湯」と「新湯」が11月末で閉館する。村が12月1日の開業を目指して建設を進める村営新浴舎に源泉の湯が回され、営業できなくなるためだ。昭和時代の建築物として風情を残すが、老朽化が著しく、将来的には建物自体も取り壊される見通し。常連客の地元住民や観光客にとっては交流の場でもあり、「閉館は寂しい」と惜しむ声が上がる。[br] 下風呂は歴史ある湯治場で、室町時代の下北半島の地図に「湯本」として記載が残る。現在の両浴場は共にヒバ造りで脱衣場と浴槽があるだけの銭湯だが、大湯は酸性の含硫酸、新湯は含硫黄と、それぞれ異なる泉質を楽しむことができる。[br] 「お風呂が地元住民や観光客の社交場となっている」。こう話すのは大湯で番頭を務めて5年目になる中野和子さん(65)。「漁師だったら漁の話をするなど、入浴しながら会話するのが日常。入りに来る時間が決まっている人もいて。来なきゃ来ないでどうしたとなる」と、入浴客の様子をほほ笑ましく見守っている。[br] 八戸市桔梗野の柳谷正雄さん(82)も、こうした交流を楽しみにしている一人。30年以上前から下北地域に来るたびに立ち寄っており、「村の人に釣りのスポットを教えてもらうのが楽しい。今ではこうした雰囲気の銭湯も減っているし、なくなるのは寂しいね」と残念がる。[br] 新湯に毎日通う近くの女性(65)も「雰囲気がよく、ゆったりと静かに入れるのが好きだった。新しい浴舎になると、それも難しくなるかな」と語る。[br] 両浴場は建築から50年以上が経過。近年はさまざまな箇所が修繕に負われるなど、老朽化の影響が顕著になっている。管理する下風呂財産区管理会の平井賢一会長(85)は「(建物は)これまでよく頑張ってもらった。入浴客に何かあってはいけないし、閉館はやむを得ない」と村の対応に理解を示す。その上で「下風呂のお湯は村唯一の宝。新たな施設で歴史を紡いでほしい」と願う。[br] 両浴場で使われる湯は、作家井上靖が宿泊した長谷旅館跡地に新たに開業する新浴舎「下風呂温泉『海峡の湯』」に集約され、地区にあるもう一つの源泉「浜湯系」の湯も楽しめるようになる。新浴舎では地元食材を使った料理を提供する食堂を設け、井上が小説「海峡」を執筆した部屋を再現するなど、村のにぎわいを創出する拠点として期待されている。[br] 開業後は、源泉の湯量の関係で両浴場は営業継続が困難になるという。村は両浴場の跡地利用について、地元住民と相談して決めることにしている。11月末で閉館する大湯=7月、風間浦村下風呂