時評(8月26日)

イスラエルとペルシャ湾岸の産油国アラブ首長国連邦(UAE)は、トランプ米政権の仲介で関係正常化に合意した。 イスラエルが敵対してきたアラブ諸国と国交を結ぶのはエジプト、ヨルダンに続いて3カ国目。中東の政治地図が塗り替えられることになる。 両.....
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 イスラエルとペルシャ湾岸の産油国アラブ首長国連邦(UAE)は、トランプ米政権の仲介で関係正常化に合意した。[br] イスラエルが敵対してきたアラブ諸国と国交を結ぶのはエジプト、ヨルダンに続いて3カ国目。中東の政治地図が塗り替えられることになる。[br] 両国の正常化は歓迎すべきことだ。しかし、米国の狙いの一つがイラン包囲網の強化にあることは明白だ。同湾の緊張をこれ以上高めてはならない。[br] 今回の関係改善には、大きく言って三つの問題がある。[br] 第一に、イスラエルとアラブ諸国を長年対立させてきたパレスチナ問題の解決の道筋が何ら見えないことだ。[br] アラブ諸国の基本的立場は「イスラエルが占領中のヨルダン川西岸(パレスチナ自治区)から撤退するのと引き換えに同国を承認する」というものだ。[br] だが、イスラエルは今回、自治区へのユダヤ人入植を一時停止することに同意はしたが、パレスチナとの和平交渉に前向きな姿勢は示さなかった。大きな譲歩をせず、悲願だったアラブ諸国との関係改善を獲得した。[br] UAEは中東和平を棚上げにしてイスラエルとの和解の道を選んだ形だが、パレスチナ自治政府は強く反発、和平の行方は絶望的なままだ。[br] 第二に、合意の背景には、米政権のイラン封じ込めの思惑が働いていることだ。[br] トランプ大統領は前政権がまとめた「イラン核合意」から離脱して制裁を発動、ペルシャ湾の軍事力を増強し、イランを追い詰めている。今年初めには米国によるイランの将軍暗殺で戦争直前の危機にまで発展した。[br] 大統領はイランの対岸のUAEとイスラエルとの関係を緊密にすることで、米主導のイラン締め付けを一段と強固にしようとしているようだ。[br] 同湾では合意の発表後、UAE警備艇がイラン漁船に発砲して死者も出ており、再び緊張が高まる懸念が強い。[br] 第三に、合意がトランプ大統領の外交的成果をアピールし、大統領選を有利にするために作られた疑念があることだ。[br] 大統領は合意発表の際、執務室で大勢の部下を従え「歴史的だ」と自賛したが、弾劾を招いたウクライナ疑惑のように、外交を“私物化”する試みとの批判も根強い。[br] UAEに続き他のアラブ諸国の追随も取り沙汰されている。だが、イスラエルとアラブ世界の真の正常化はパレスチナ問題の根本的な解決なしに到来することはないだろう。